【競馬】打倒キズナの一番手は、怪物オルフェの「同級生」 (2ページ目)
競走馬にとって、致命傷とされるケガのひとつに「屈腱炎(くっけんえん※)」がある。ウインバリアシオンは今から約2年前、4歳の夏にその屈腱炎を発症し、およそ1年半にもおよぶ長期休養を強いられた。
※競走馬の脚部、主に前肢に発生する病。完治しにくい病気で、再発しやすく、競走馬の「不治の病」と呼ばれる。
ウインバリアシオンといえば、2011年の日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)や、菊花賞(10月23日/京都・芝3000m)で、同世代の三冠馬オルフェーヴルの2着となった実績馬。その後、古馬との対戦ではなかなか勝ち切れなかったものの、GI戦線で主役を務められるだけの能力は備えていた。経験を重ねることで、徐々に成長の跡も見せていたと言える。そして、まもなく飛躍を迎えそうなときに、屈腱炎を発症した。
1年半のブランク、それも屈腱炎によるものとなれば、たとえケガが癒(い)えても、かつての走りを取り戻すのは簡単ではない。過去にも、多くの実績馬が復帰しながら、以前のような輝きを取り戻せぬまま、消えていった。
ゆえに、ウインバリアシオンの復帰も、多くのファンが静観した。復帰戦となった金鯱賞(2013年11月30日/中京・芝2000m)では、8番人気の低評価だった。だが、ウインバリアシオンは周囲の評価に反発。いきなり3着と好走した。さらに、続くGI有馬記念(12月22日/中山・芝2500m)では、オルフェーヴルの2着に入り、ライバルの引退に華を添えたのだった。
屈腱炎を患(わずら)ったウインバリアシオンが療養していたのは、ノーザンファーム空港牧場。同牧場の厩舎長を務める大木誠司氏も、復帰してからの走りには目を見張ったという。
「復帰戦の金鯱賞は、『まずは無事に回ってきてほしい』という思いで見ていました。ですから、3着まで追い上げてきたときは驚きましたね。ただし、ウインバリアシオンがこちらに来たとき、屈腱炎としては脚の腫(は)れが非常に少なく、症状は軽度だったんです。それを見て、おそらく競走能力に影響は出ないだろうと考えていました。回復も至って順調で、予定よりも早くトレセンに戻せたほど。復帰してすぐいい走りができたのは、このあたりの要因が大きいと思います」
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