地元優勝を遂げたスピース。「マスターズの悪夢」は払拭できたか (2ページ目)
ところが、である。最終日最終組でスピースと一緒にプレーしたライアン・パーマー(39歳/アメリカ)が、なんと開催コースのメンバーで、このフォートワースが地元。いくらスピースが人気選手とはいえ、正真正銘の地元選手であるパーマーに送られる応援も、それに負けないくらい大きかった。
しかも、パーマーはフォートワースの英雄的な存在。彼に勝ってほしいと願う熱烈なファンからは、スピースへの配慮に欠けた声援もあった。いや、むしろ、そうした野次のほうが多かったかもしれない。
「へいスピース、マスターズを覚えているか!」
「がんばれ、パーマー! スピースはまたマスターズのときのように崩れるさ」
そんな言葉が、最終組に投げかけられた。
マスターズで起こったこと――それはもちろん、首位を走っていたスピースが、最終日の12番パー3でクリークに2度入れて「7」を叩いたことである。そこでトップの座から転落。残りのホールで粘りを見せたが、勝利の女神が微笑むことはなかった。
あれから1カ月以上が過ぎて、「もう終わったことだ」とスピースは懸命に気持ちを切り替えてきた。目の前の試合に集中し、精一杯戦ってきた。しかし今大会でも、不安に苛(さいな)まれた。最終日の朝には「いつもよりずっと緊張した」という。ゆえに、「野次を聞くのは、決して面白くはなかった」とスピースは漏らす。
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