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ウルグアイ代表では裏目に 「狂気のリーダー」ビエルサは「論理」で周囲を巻き込んでいった (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

【根暗なサイエンティストではない】

 たとえばチリ代表の監督としてワールドカップ南米予選を戦っている最中、MFのアルトゥーロ・ビダルが紅白戦で何度かアクロバティックなプレーで周りを沸かせたことがあった。だが、ビエルサはビダルの側に走り寄り、丁寧だが強い調子で説教をした。

「あなたが先ほどからしているすべてのプレーは、チームにとっては無秩序でしかありません。まったくもって何の役にも立たないプレーばかりです。もし、あなたが私のもとでプレーしたいのなら、要求された役割を忠実にこなすことです。あなた自身が必要だと思うことをしてもらっても困るんですよ」

 こうした言い方は、場合によっては嫌悪される。ただ、ビエルサは根暗なサイエンティストというわけでもない。

 ベレス監督時代、ビエルサは守護神ホセ・ルイス・チラベルトとの不和が報じられていた。ふたりはほとんど口をきくことがなかった。チラベルトは奔放な性格で、「陰湿な戦術家と馬が合わない」と決め込んでいたという。ビエルサ自身、これといった手を打たなかった。

 ある日、遠征の飛行機で隣の席になったふたりは、機体が激しく揺れる乱気流に巻き込まれる。人生の終わりと思うほどの混乱状態だった。

 そのとき、ビエルサは落ち着いた様子で、微笑すら浮かべてチラベルトに話しかけたという。

「あなたは幸せですか?」

 チラベルトは唖然とし、その後で大笑いした。彼も豪傑である。その剛胆さに触れ、すっかり意気投合したのだという。

 神経質そうな学者然とした印象は一面に過ぎず、恐れ知らずの肝の太さと、好戦的な面も持ち合わせている。アルゼンチンリーグ時代のある試合で、ロッカールームから選手をピッチに送り出すとき、彼はこんな言葉を投げた。

「街中で殴り合いの喧嘩になると、ふたつのタイプの男がいます。相手を殴りつけ、流血を見て、怯んでしまう者。もうひとりは相手を殴り、流血を見て、さらに興奮して殴り続け、相手を殺してしまう者。みなさん、これから向かう場所にはすでに血の匂いがしていますよ」

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