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ウルグアイ代表では裏目に 「狂気のリーダー」ビエルサは「論理」で周囲を巻き込んでいった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

【就任2日で辞任】

 たとえばアスレティック・ビルバオ監督時代、予定されていた練習施設の改修工事が終わっていなかったことに腹を立て、怒りをぶちまけてクラブ内で確執を生んだことがあった。たいていは事情を聞いて、改善を求めるのが社会的な行動規範だろう。しかし、予定通り施設が使えないことに感情を制御できなかった。

 その後も、ラツィオの監督就任後、わずか2日で辞任する珍事を起こしている。舌戦に発展しても、ビエルサは一歩も譲らなかった。

 クレイジーなリーダーだが、そのロジックが求心力を持ったとき、敬愛すべき存在になるのだ。

「ビエルサには『ゲーム中ずっと、敵陣でプレーすることにトライしてほしい』と指示されたよ」

 かつてアルゼンチン代表でプレーしたMFフェルナンド・レドンドは、ビエルサの口から出たひと言をいまだに忘れられていなかった。

「ビエルサからは『90分間、敵の陣地でプレーして下さい。しかも、できるだけペナルティエリア近くにポジションを取るのです』と言われた。僕は最初、冗談かと思った。自分はセンターMFでゲームを作りながら攻撃に参加するけど、守備のリスク管理もしないといけないから。でも、彼は本気だった。『激しくボールにアタックし、絶え間なくスペースを見つけ、攻撃し続けるのです』ってね」

 ビエルサの辞書に「攻守のバランス」という言葉はない。自分たちがボールを持ち続け、攻め続ける。奪われたらそこから奪い返し、ゴールに迫るため、マンツーマンが基本だ。

 ビエルサは、ニューウェルス・オールドボーイズ、アトラス、クルブ・アメリカ、ベレス・サルスフィエルド、エスパニョール、アルゼンチン代表、アルゼンチン五輪代表、チリ代表、アスレティック、マルセイユ、ラツィオ、リール、リーズ、ウルグアイ代表と数多くのチームを率いてきたが、35年以上にわたる指導歴で自らの哲学を裏切ったことはない。理論が実証されると、成功は連鎖し、チームは勝手に結束した。

 試合分析の的確さと執拗ぶりはすさまじく、何千本というビデオを研究・検証し、その論理を完璧に近づける。そこから外れる要素を許さない。

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