レアル復帰で「神通力」は通用するか 「モウリーニョを演じる」モウリーニョの劇場型マネジメント
【前編】『モウリーニョはなぜ通訳から一流監督になれたのか 目の前の人間の心を震わせる「言葉の力」』>>
「モウリーニョの練習はとても楽しくて、"自分はこのチームのなかで大切な存在"という気持ちにさせてくれた。そのおかげで、選手たちは役目を認識し、一丸になって戦うことができたんだ」
インテル時代、ジョゼ・モウリーニョの麾下(きか)でプレーしたアルゼンチン人FWエルナン・クレスポはそう述懐したが、だからこそ欧州制覇を実現できたのだろう(2010年、チャンピオンズリーグ優勝)。
ポルトガル人指揮官モウリーニョは、選手を"催眠状態"にするほどのカリスマ性を持っていた。その事実はモウリーニョ自身をも、いつのまにか高揚させていたのではないだろうか。
レアル・マドリードの練習場で選手たちに指示をするジョゼ・モウリーニョ photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA「私は特別な存在だ」
彼は自らを「Special One」と公言し、物議をかもすこともあった。こうした発言をする監督は、たいてい信頼を失うものだ。「勝ち星やタイトルを重ねることで傲慢になった」と呆れられ、求心力が揺らいでも不思議ではない。
しかし、この時代のモウリーニョは「特別な存在」として突っ走っていた。記者会見場を役者の舞台のように捉えていた節があり、彼は主演で、ディレクターで、プロデューサーだった。相手監督を公然と罵(ののし)り、審判を追い込むような言葉も発した。レアル・マドリード時代、バルセロナとのクラシコでは、コーチだった故ティト・ビラノバ(フランセスク・ビラノバ)の目に指を入れる蛮行に及んだことまであった。
マネジメントを劇場化したリーダーが辿り着く先とは?
モウリーニョは選手の戦闘力を上げるため、モチベーションを最大限まで高めてきた。言葉の使い手である彼にとって、それは難しいことではなかったはずだ。反則ギリギリ、暴力性も帯びるほど、好戦的な選手に変身させたのである。
かつて世界に冠たるレアル・マドリードを率いていた頃、その最たる例がポルトガル代表センターバック、ペペだった。荒っぽいディフェンスが目に余るようになり、相手にケガをさせてもおかしくないスライディングタックルを連発した。
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

