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【欧州サッカー】「三笘薫と同じ種類のテクニック」エムバペの穴を埋めた22歳の新鋭ドリブラーを松井大輔が分析 (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【日本人がマネすることはできる?】

 足の長さとスピード。バルコラのドリブルには自分の武器を有効に活用したテクニックがちりばめられていることを、松井氏は説明してくれた。そのうえで、バルコラの強みはそれだけではないと言う。

「バルコラのドリブルのベースとなっているのは、三笘と同じように、縦突破とカットインの両方を使い分けられることです。特にバルコラは、相手の重心を動かしてから股抜きや『裏街道(※)』を頻繁に使って突破します。

※裏街道=相手の背後にボールを出して、自分は対峙する相手に向かってボールを出した反対側を走り抜けるテクニック。

 ただ、それだけではないのが、バルコラのすごいところ。狭いエリアでは細かいボールタッチで相手をかわすこともできますし、右サイドでも違和感なくプレーできる。なによりシュート技術が高いので、ペナルティエリア付近でボールを持つと、相手にとっては次に何をしてくるのか読みにくい。

 近年のドリブラーはドリブルだけでは成立しなくなっていて、シュートやクロスボールの精度も高くなければ、持っているドリブル能力が試合で半減してしまいます。そういう意味では、バルコラは万能型のアタッカーに進化していると思います。年齢的にもまだ成長が見込めますし、左右だけでなく、今後は中央でもプレーできるようになるかもしれません。人材の宝庫フランスに、また末恐ろしい選手が現れたと感じます」

 では、バルコラのドリブルを日本人がマネすることはできないのか。子どもたちにバルコラのドリブルテクニックを教えるとしたら何を伝えるべきか、育成年代を指導する松井氏に聞いてみた。

「足が長くて速い選手なら、バルコラのテクニックを盗めると思います。ただ、ドリブルは人によってリズムが違うので、もしスピードがないのであれば、無理してマネする必要はないと思います。

 ただし、バルコラも狭いエリアでドリブルをする時に、ボールを『イン→アウト→イン』というリズムでタッチする技術を見せています。それは基本中の基本なので、どんなタイプの選手でも身につけておく必要はあるでしょうね。その基本技術をマスターしたうえで、自分に適したドリブルテクニックを学んでいってほしいと思います」

(第8回につづく)


【profile】
松井大輔(まつい・だいすけ)
1981年5月11日生まれ、京都府京都市出身。2000年に鹿児島実業高から京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)に加入。その後、ル・マン→サンテティエンヌ→グルノーブル→トム・トムスク→グルノーブル→ディジョン→スラヴィア・ソフィア→レヒア・グダニスク→ジュビロ磐田→オドラ・オポーレ→横浜FC→サイゴンFC→Y.S.C.C.横浜でプレーし、2024年2月に現役引退を発表。現在はFリーグ理事長、浦和レッズアカデミーロールモデルコーチ、U-18日本代表ロールモデルコーチ、京都橘大学客員教授を務めている。日本代表31試合1得点。2004年アテネ五輪、2010年南アフリカW杯出場。ポジション=MF。身長175cm、体重66kg。

著者プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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