クバラツヘリアは母国をワールドカップへ導けるか 世界トップのウイングがパリ・サンジェルマンへ
西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第32回 フビチャ・クバラツヘリア
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。
今回は、ナポリからパリ・サンジェルマンへの移籍が発表された、世界トップクラスの左ウイング、フビチャ・クバラツヘリアを紹介。サッカー界では欧州の小国であるジョージアのエースとしてW杯初出場なるかに注目が集まっています。
【"クバラドーナ"の移籍】
1月19日時点でセリエAの首位に立っているナポリに衝撃が走っている。フビチャ・クバラツヘリアのリーグアン、パリ・サンジェルマンへの移籍が決まったのだ。
ナポリからパリ・サンジェルマンへ移籍が決まったクバラツヘリア photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 2022年にナポリへやってきたジョージア人は、その名前を何と読んだらいいかわからなかった。注目の若手のひとりとされていたが、世界的にはほぼ無名の選手だったからだ。ところが、移籍してきた最初のシーズンで、クラブに33年ぶりのリーグ優勝をもたらす大活躍。スタジアムにその名が冠されているナポリのレジェンド、ディエゴ・マラドーナにあやかって"クバラドーナ"と呼ばれるに至る。
クバラツヘリアは18歳でロシアリーグのルビン・カザンに移籍、21歳まで所属していた。そこで起きたのがロシアのウルクライナ侵攻。FIFAの特例措置によって外国籍選手の契約は無効化され、ジョージアのディナモ・バトゥミ経由でナポリに移籍している。
ナポリはトロントFC(MLS)へ移籍したロレンツォ・インシーニェの後釜を探していた。長年エースとして活躍し、クラブの象徴でもあった左ウイングの代役は荷が重かったはずなのだが、クバラツヘリアは圧倒的なパフォーマンスでナポリ新時代の幕を開けた。
ところが、クバラツヘリアとともにナポリ躍進の原動力だったナイジェリア代表のヴィクター・オシムヘンが、昨年9月にガラタサライ(トルコ)へ期限付き移籍。さらにクバラツヘリアもこのタイミングでの移籍とあって、ナポリファンのショックは計り知れないものがある。
オシムヘンはベルギー代表のロメル・ルカクの獲得によって構想外になったとされているが、現在のオシムヘンとルカクでオシムヘンが構想外というのは奇妙だ。おそらくナポリの経営方針として、最高値で売れるタイミングで移籍させたいということではないか。オシムヘンはいくつかの移籍話がまとまらずローンの形で放出したが、クバラツヘリアはパリ・サンジェルマンと7000万ユーロ(約112億円)の移籍金で合意したと報道されている。
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著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。