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守田英正の同僚・スポルティングのギェケレシュがスゴい 長身の北欧FWは現代サッカーでなぜ活躍?

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

西部謙司が考察 サッカースターのセオリー 
第20回 ヴィクトル・ギェケレシュ

日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。今回は、守田英正も所属するスポルティングで点を取りまくっているFWヴィクトル・ギェケレシュ。長身を生かした強烈なプレーぶりを紹介するとともに、北欧のストライカーたちが今、欧州で活躍している理由に迫った。

【187㎝のドリブラー】

 スポルティングのエースストライカー、ヴィクトル・ギェケルシュはリーグ9試合ですでに12ゴール。昨季は公式戦50試合43ゴールだった。スポルティングへ移籍したばかりのシーズンだったが、シーズン後の夏にはアーセナルなどビッグクラブへの移籍が噂されていた。

スポルティングの長身ストライカー、ヴィクトル・ギェケレシュ photo by Getty Imagesスポルティングの長身ストライカー、ヴィクトル・ギェケレシュ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る ハンガリー系スウェーデン人、26歳。187㎝の長身で北欧出身ということもあり、ポストワークが得意なタイプを想像するかもしれない。ギェケレシュはそれもできるが、本領はドリブルである。

 チャンピオンズリーグ第3節のシュトルム・グラーツ戦では53分にチームの2点目をゲット。ギェケレシュは中央から左へ流れながら縦パスを受け、背後にぴたりとついてきたDFのチャージを背中で受け止めて逆にはじき返し、その反動を使って縦へ抜け出す。さらにDFの追走コースをカットインで遮り、ゴール前でもGKをかわしてシュート。カウンターからひとりでフィールドの半分を走りきってのゴールだった。

 これまでもこの手の得点を数多くあげている。瞬間的なスプリント力とキレ、コンタクトの強さがあり、長い疾走後も息切れしない。

 とくにフェイントも使わず、シンプルに持ち出す速さで勝負するタイプ。その際も足下からボールが大きく離れることはない。体格は全然違うけれども、リオネル・メッシ的なシンプルでエネルギッシュなドリブル。とにかく瞬間的な出力が大きいのが特徴だ。

 面前の相手をかわして前進するスピードがあるだけでなく、それ以上に相手を背負った時に強みを発揮している。普通はDFが背中に貼りついたら前進は諦めてサポートについた味方へつなぐものだが、ギェケレシュは素早い反転で背後のDFをはがして前進していける。最前線のセンターフォワード(CF)ということもあり、味方のサポートが遅れるケースは多々あるだけに、サポートを待たずに一気に突破していけるのは強みだ。孤立していることが逆に強みになるCFだ。

 日本では、柏レイソルの細谷真大が似ていて、DFを背負った状態から引きはがせる。これができるCFはそう多くはない。爆発的なスプリント能力と、体の強さを併せ持っていないと成立しにくいプレーである。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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