かつて小野伸二がUEFAカップを掲げた地「スタディオン・フェイエノールト」~欧州スタジアムガイド
欧州サッカースタジアムガイド2024-2025
第9回 スタディオン・フェイエノールト(Stadion Feijenoord)
ロンドンのウェンブリー・スタジアム、マンチェスターのオールド・トラッフォード、ミラノのジュゼッペ・メアッツァ、バルセロナのカンプ・ノウ、パリのスタッド・ドゥ・フランス......欧州にはサッカーの名勝負が繰り広げられたスタジアムが数多く存在する。それぞれのスタジアムは単に異なった形状をしているだけでなく、その街の人々が集まり形成された文化が色濃く反映されている。そんなスタジアムの歴史を紐解き、サッカー観戦のネタに、そして海外旅行の際にはぜひ足を運んでもらいたい。連載第9回目はスタディオン・フェイエノールト(オランダ)、通称「デ・カイプ」を紹介する。
通称「風呂桶」と呼ばれるスタディオン・フェイエノールト photo by YUTAKA/AFLO SPORTこの記事に関連する写真を見る
オランダ語で「デ・カイプ(De Kuip)」、日本語では「風呂桶」という意味のかわいらしい愛称でファンに親しまれている。それがオランダ・ロッテルダム、ニューウェ・マース川のほとりにある「スタディオン・フェイエノールト(Stadion Feijenoord)」だ。
かつては元日本代表MF小野伸二が在籍したことでよく知られており、現在は日本代表FW/MF上田綺世が所属する、オランダリーグ・エールディビジの名門のひとつフェイエノールト・ロッテルダムのホームスタジアムだ。ロッテルダム中央駅からは南にトラムやバスで20~30分ほどの位置にある。
クラブは1908年に誕生し、1912年からフェイエノールトという地区名がクラブ名になった。日本語ではスタジアム名もクラブ名もフェイエノールトと表記するが、実はスペルが異なっている。
スタジアムが設立された当時、クラブ名はまだフェイエノールト地区と同じスペル( Feijenoord)だった。しかし、より国際的なクラブになるために、1973年にクラブはフェイエノールト(Feyenoord)と改名した。しかしスタジアムのスペルはそのままだ。オランダ語では、「ij」は「ij」とも「y」とも表記されるため、海外でも発音しやすいようにとクラブ名は現在のスペルとなった。
それではスタジアムの歴史を見ていきたい。1930年代初頭、クラブ経営陣は、1917年以来使用してきたクロムメ・ザントウェグスタジアムからの撤退を検討していた。そのために、最も重要な試合は、しばしば市北部にあるスパルタのスタジアムであるヘト・カスティールで行なわれるようになった。ただ、この撤退計画は多くのサポーターの反感を買うことになった。
そこで、クラブは新しいスタジアムの建設を考えた。当時のクラブの会長だったリーン・ファン・ザントフリートは、スタンドが2層吹き抜けで視界を遮る障害物のない、ヨーロッパの他のどのスタジアムとも違う、まったく新しいスタジアムの建設を思いついた。
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著者プロフィール
斉藤健仁 (さいとう・けんじ)
スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に『ラグビー『観戦力』が高まる』『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』など多数。