初ゴールの酒井宏樹と、5失点の昌子源。日本人ダービーの明と暗 (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 圧巻は、1-1で迎えた50分の逆転ゴールだった。

 敵陣深い位置で相手のクリアをカットした酒井が、近くにいたフロリアン・トヴァンにボールを預けると、そのまま斜めに動いてボックス内にポジション移動。一方、ボールをもらったトヴァンは逆サイドにクロスを入れ、それをルーカス・オカンポスがヘッドで折り返すと、そのボールをボックスの外から酒井がダイレクトで左足一閃。シュートは見事、ゴール右隅に突き刺さった。

 注目は、そのゴールが得意の右足ではなく、左足によるものだったこと。これは、昨シーズン後半戦から時折プレーしている左サイドバックの経験の賜物と言っていいだろう。シュートを狙うにしても、かつての酒井なら、あの場面では一度トラップをしてから右足ベースで次のプレーを選択していた。だが、今回は迷わず左足で直接放っている。

 ケガの影響で当初はやりづらそうに見えた左サイドバックでのプレーも、最近では左足でクロスに持ち込むシーンも少しずつ増えており、トヴァンにボールを預けた後のポジショニングといい、ここにきてプレーの幅は確実に広がっている。現在マルセイユとの契約延長交渉が注目されているが、酒井にとってマルセイユは、相当に居心地の良いクラブとなっていることは間違いなさそうだ。

 一方、フランスで進化を続ける先輩の姿を見て、昌子は何を思ったか――。そこが、酒井の圧勝に終わった今回の日本人ダービーの隠れた注目ポイントでもある。

 この試合の昌子は、ほとんど見せ場を作れなかった。チーム内で最も定評のある、最終ラインからのビルドアップおよびロングフィードについても、チームが押し込まれる時間帯が長かったこともあり、効果的なプレーはほんの数回。昌子とグラデルのホットラインが酒井に読まれて、遮断されてしまう場面もあった。

 不運だったのは、格上マルセイユがリーグで最もサイドからのクロスボールを多用するチームだったことだろう。それにより、ゴール前の空中戦はCBクリストファー・ジュリアンやボランチのイブラヒム・サンガレなど、190cm以上の選手の出番が増える。こぼれ球の対応を含め、昌子はボックス内で難しい対応を強いられた。

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