「勝ち慣れたファン」も狂喜乱舞。バルサ奇跡の逆転劇が歴史を変えた (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 今季限りでの退団が決まっている指揮官ルイス・エンリケは記者会見で、「今夜のことを言葉で説明することは本当に難しい。これまでに見たことのない、カンプ・ノウでのスペクタクルから始まったホラー映画のシナリオのような試合だった。唯一の問題は明日からまた新たな戦いが始まることだ」と語った。いつもの会見で見せる、どこか怪訝そうな表情は一切なく、バルセロナが起こした奇跡に心から満足していた。

 バルセロナが3点を先取した後の62分、PSGのエディソン・カバーニのゴールが決まった瞬間、カンプ・ノウは沈黙に包まれた。それも当然だろう。これで3-1(2戦合計3-5)。ウルグアイ人FWの得点は、あと1点で2戦合計を振り出しに戻せる状況から、新たに3得点を奪わなければならない事態にバルセロナを追い込んだ。

 これまで逆転劇といえばライバル、レアル・マドリードのものだった。貿易港として経済的に栄えてきた商人の街であるバルセロナの人々は、現実主義的で諦めが早いと言われる。ルイス・エンリケだけでなく、過去にはOBのシャビなども「カンプ・ノウは、なかなかサンティアゴ・ベルナベウのような雰囲気にはならない」と、こぼしていたことがあった。

 だが、この日は違った。ロッカールームでの約束通りに、ネイマールが試合終了間近に続けて2点を決める。するとカンプ・ノウでは、逆転を確信する人々がチームを後押しする熱い声援を再び送りはじめた。

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