【Jリーグ】FC東京が残留争いから抜け出せない理由 「戦力」を生かせない組織の問題とは (3ページ目)
しかし、FC東京は選手に恵まれているが、組織としてチームを機能させることに苦労していた。バックラインからつなげようとしては、簡単にプレスにハマってしまう。どうにか敵陣に入っても、どう崩すのか、そのコンセプトが伝わってこない。練度が乏しく、個人任せで、やがて相手の勢いに押し込まれた。最後はリードを守ろうとするあまり下がり過ぎ、守る人数を増やす人海戦術しか打つ手がなかった。必然的にブロックの前のスペースを敵に明け渡し、それが後半アディショナルタイムの失点を生んだ。
「気合が足りない」「集中力が足りない」......そんな精神的な問題ではない。戦術的に能動性が足りず、失点は起こるべくして起こった。ここ数試合は上向いていたが、それも補強による効果で、個人が局面を変えていたに過ぎない。湘南戦もヒアンがカウンターのチャンスを決めきっていれば、相手の心をへし折っていたかもしれないが......。
湘南対FC東京は、残留争いの縮図と言えた。どちらも上位に浮上する決定打はない。清水から新潟まで勝ち点差は11ポイント。混戦必至だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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