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【Jリーグ】FC東京が残留争いから抜け出せない理由 「戦力」を生かせない組織の問題とは (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【湘南がギリギリでねばれる理由】

 後半に入った石橋瀬凪は左サイドからドリブルで相手ラインを押し下げ、そのブロックの前を使うパスで、何度もチャンスを作り出していた。1点目も彼が押し下げた後、松本大弥がフリーでパスを受けてミドルを放ち、こぼれ球を押し込んでいる。左右からの揺さぶりは激しく、トレーニングを重ねた攻撃のイメージを感じさせた。それが終盤の同点劇につながった。

 湘南は、GK上福元直人、DF畑大雅、鈴木淳之介、FW福田翔生などをシーズンは半ばで失いながら、チーム力を保っている。それは継続の賜物で、プレーモデルの確立を意味しているだろう。彼らは毎シーズン、粘り強く残留に成功しているが、その積み重ねが地力になっているのだ。

 ただ、湘南は直近のリーグ戦10試合は、4分け6敗と勝ち点獲得に苦労している。どこが相手でも(柏レイソル戦を除けば)互角に戦っているが、21失点で守備の脆さが目立つし、最後のところで仕留めきれない。率直に言って、戦力的な劣勢は否めないだろう。ギリギリの戦いが今回も続くはずだ。

 一方、FC東京は戦力的には恵まれている。

 長友佑都を筆頭に、森重真人、仲川輝人、橋本拳人など代表歴のある歴戦の猛者に、俵積田晃太、佐藤恵允、野澤零温、北原槙のような新鋭を揃えた混成軍。そこに、マルセロ・ヒアンのように使い方によっては強力な武器になるカードを擁する。そして夏には、GKキム・スンギュ、DFアレクサンダー・ショルツ、室屋成を次々に補強した。

 なかでも、浦和レッズから期限付き移籍の長倉幹樹は非凡なストライカーと言える。南米、特にアルゼンチンのFWを思わせる攻守の激しさや駆け引きのうまさを感じさせる。ポストに入るときの間合いは独特で、腕の使い方がうまいだけでなく、下半身が崩れず、もつれたボールを自分のものにするタフさもある。パスを呼び込み、シュートで足を振る感覚はほとんど天性。湘南戦でも、泰然とボレーを叩き込んでいた。J1の名だたるストライカーの中でも、彼の存在は異質だ。

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