稲本潤一&今野泰幸は今のJリーグをどう見ているか? 同時に南葛SCで成し遂げたいことを語る (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・構成 text by Takamura Misa

今野 正直、Jリーグと海外とでは金銭面も全然違いますからね。国によっては、そもそものベースになる金額もかなり違う。

 加えて、サッカーが文化として根づいている国であれば、それこそ下位チーム同士の対戦でもスタジアムは満員で、雰囲気もすごくよくて、みたいな環境でサッカーができるし、昨今は海外組でなければなかなか日本代表に選ばれにくいという現実もある。そういう意味では、日本人選手の海外への流出はもはや止められない気がします。

稲本 そうね。だからこそ、Jリーグはいよいよその状況に真剣に向き合わなければいけない時代が来ているのかな、と。

――Jクラブは今後、どういう進化を見出していくべきだと思いますか?

稲本 まずは、各クラブがそれぞれの色や魅力を明確に備えられるようにならなきゃいけないというのは、ひとつあると思う。そのためには、"育成"のところも絶対的に大事になってくるはずですしね。

 自分たちのクラブでできるだけたくさんのプロサッカー選手を育てて、海外にチャレンジする選手が出てきても、レベルを落とさずに戦える仕組みを作るべきじゃないかな、と。そしたら、育成フィー(育成補償金など)でまた新たな選手を育てるという循環もできますし、何より長い目で見て、ファンのみなさんのクラブや選手への愛着にもつながるのかな、と。

 そのためには、育成の指導者の価値をもっと上げていく必要もあると思います。正直、Jクラブのアカデミー指導者の給料はまだまだ安いと聞いていますけど、そこにもしっかり投資していかないと、やりたいって手を挙げる人も出てこないだろうし、いい指導者も集まってこない。ひいては選手の強化にもつながっていかない気もします。

今野 先ほども話したように、僕はJリーグの選手ではなくなってから、逆にJリーグの試合をよく見るようになったんですけど、もちろんリーガもプレミアも面白いけど、JリーグもJリーグで面白いし、いろんな魅力が詰まっていると思うんです。けど、そのことが世間に浸透しているかとか、地域で知れわたっているかというと、まだまだ全然そうじゃない。下位クラブ同士の対戦でもお客さんが満員になるほどサッカーが文化になっているわけでもないですしね。

 ただ、それぞれのクラブ、チーム、選手には必ず魅力があるからこそ、それが正しく伝われば「スタジアムに行ってみようか」みたいなことも起きるんじゃないかと。だからこそ、Jリーグが長らく推し進めてきた地域密着もすごく大事な要素だし、そのためにチームや選手がもっと地域との関わりを深めていくことも必要なんじゃないかな、とは思います......って偉そうなことを言ってますけど、僕がそういう大切さに気づいたのも、南葛に来てからなんですけどね。

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