日本文学を愛する浦和DFのアレクサンダー・ショルツ 好きな作家は川端康成 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・文 text by Igawa Yoichi
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

【日本のすばらしいことのひとつは忍耐力だと思う】

 幼少期からの夢は「自分の書店を開くこと」というほど、ショルツは本に親しんできた。時代の流れによって、今になってそれを実行に移すには「一考の余地がありそうだ」と自身も認めているが、彼は読書によってかけがえのないものを得てきたと明かす。

「多くの書物を開き、物語に没入し、知らなかった事柄に出会い、心が動く。そうした読書体験を重ねると、自然と固定観念がなくなっていき、開かれた人間になっていくと思う。自分はもともと、何事にも中立的な立場を取るようにしているから、そんなパーソナリティによるところもあるかもしれない。もちろん私にも好みはあるけど、最初に持つのは観察者の視点だ。これは本を読んできたことで、身についたものだと思う」

 そんな観察眼を持つショルツに、日本はどう映っているのだろうか。

「忍耐力。これはこの国のもっともすばらしい事柄のひとつだと思う。欧州をはじめ、日本以外の国では、何か物事を進める時に、それぞれが自分の考えを強く主張して、言い争いになったりすることも多いけど、日本でそんなことは滅多に起きない。それをどう感じるかはひとそれぞれだけど、私には好ましいことだ。自分も常々、他者に敬意を払うようにしているからね。

 生活面では、すべてのクオリティが高い。とくにこの国で受けられるサービスは、世界一だ。他の国では、絶対に味わえないものだよ。それから人々は概して、自らの職業に誇りを持っているように見える。プライドを抱きながら仕事に従事することの意義は大きいと思う。加えて、労働を尊ぶ文化も素敵だ。

 ただ、日本人は少し働き過ぎているとも感じるよ。この国ではお盆と正月の一週間ほどの休暇が、最長なんだよね? それはあまりにも少なすぎる。もっと長い休暇を取って、人生を楽しまないと」

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