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【ACL】日本勢の苦戦が示す
アジアサッカーの変化とレベルアップ (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 例えば、5月2日に国立競技場で行なわれたグループリーグ第5戦でFC東京と対戦したブリスベン・ロアー(オーストラリア)。これまでオーストラリア勢と言えば、恵まれた体格を生かし、ロングボールを駆使した大味な攻撃が持ち味だったが、このAリーグ王者は違った。ブリスベンのヴィドシッチ監督が語る。

「オーストラリアのスタイルというと、フィジカルの強さとロングボールだと思われているが、我々は今日、オーストラリアのサッカーが"変わっている"ことを示せたのではないだろうか」

 実際、ブリスベンはまったくと言っていいほど、ロングボールを使わなかった。対戦した高橋秀人が語る。

「ブリスベンは(パスの)つなぎも上手だったし、身のこなしもいいから、ターンでうまくかわされることもあった」

 最終ラインから丁寧にパスをつなぎ、サイドでのコンビネーションを生かして、チャンスを作る。そんな攻撃の組み立て、とりわけサイドの崩し方は、Jリーグのクラブも見習うべきレベルにあった。

 同じことは、柏と対戦したブリーラムにも言える。

 ブリーラムの武器はカウンター。とはいえ、ベタ引きで守備を固め、一発にかける古典的なイメージとは一線を画すものだった。その脅威を味わった、柏のネルシーニョ監督が振り返って言う。

「相手(ブリーラム)はゼロトップに近く、中盤の人数を増やして、そこからサイドに展開し、ワイドに置いたアタッカーのスピードをシンプルに使ってきた」

 ブリスベンとブリーラムに共通するのは、巧みなサイドアタック。彼らの志向するサッカーは実にモダンなものであり、単純な強さ弱さだけでなく、そこには著しい質の向上が見られた。戦術的には日本の先を行っている、と言えそうなほどである。

 中国勢のように恵まれた資金力を生かして世界のトップレベルの選手を獲得するなど、即効性の高い強化を施しているクラブもあるにはあるが、アジア全体のレベルアップが意味するところは、決してそれだけではないということだ。

 ブリスベンのヴィドシッチ監督は、FC東京との壮絶な打ち合い(4-2)に敗れてもなお、誇らしげに言った。

「オーストラリアと言えば、ロングボール。そんなイメージを変えていくには時間がかかるが、やっていきたい」

 日本勢が苦戦している理由は、過密日程や長距離移動だけではない。アジアのサッカーは、確実に変化しているのである。

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