【Jリーグ】20年間ブレはなし。ブラジルのスタイルと「ジーコの哲学」を貫く鹿島 (4ページ目)

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 また、鹿島のサッカーは非常にシンプルだ。優勝したシーズンのデータを見ると特に顕著だが、パスの本数は実は少ない。つまり、無駄な手数をかけていないし、パスをつなぐことにもこだわっていない。勝つためにやるべきことが整理されているし、選手たちはいろんな手段を講じる。結果を残すために何をするかを判断し、すばやく実行する。

 攻撃のストロングポイントは、鋭いカウンターとセットプレイの精度だろう。圧倒的な高さはないが、確実に決めてくる勝負強さがある。そのためには、いいキッカーがいる必要がある。昨シーズンは野沢拓也が多くのチャンスを演出していたが、今季から神戸に移籍したため、それがどう影響するかは注目だ。

 鹿島はピッチの外でもブレがない。つまり獲得する選手の基準がはっきりしている。昨シーズン加入した柴崎岳は、成長すると小笠原満男のような選手になるのではないかと思うし、大迫勇也は柳沢敦のようなタイプのFWになってきているイメージがある。

 どのポジションも力強さと勝負強さを感じさせる選手が多く、常に勝負にこだわって、シンプルにプレイする実直なキャラクターという印象だ。また、そういう資質のある選手をスカウトしてきているのだと思う。勝つためには無駄なことはしない。そういう選手たちの集まりが鹿島というチームを形成している。

 それらをクラブの哲学として継続していくことで、多くのタイトルを獲得してきた鹿島は、時間とお金を無駄にしていないクラブといえる。長く成功をおさめることが難しい世界で、タイトルを数多くとってきたし、今もとり続けている数少ないクラブ。

 もちろんすべてのクラブが同じである必要はないが、鹿島が継承してきている哲学は、ひとつのスタイルとして20年目のJリーグで評価されるべきだと思う。

著者プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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