サッカー日本代表のベネズエラ戦は前後半で何が違ったのか 上田綺世は冷静に把握していた (3ページ目)
メンツを変えすぎたことで、こうした何気ない違いが"漏電"のような不具合を引き起こしていた。
そこで後半、森保監督は次々に主力をピッチに送り込んでいる。しかし立ち上がりは、人を多く替えたことによる混乱があったか。ウイングバックに抜擢されていた中野就斗が股抜きで突破を許し、入れ替わられてからのクロスを左足で叩き込まれた。その後は主力組の久保、上田、伊東純也の躍動で相手ラインを押し下げ、すぐに1点を返したが......。
チームは持ち直したが、試合に入れていない選手もいた。たとえば後半からゴールマウスに立った鈴木彩艶はケガ明けもあったのだろうが、2024年のアジアカップを思い出させる不安定さだった。なんでもないクロスをファンブルし、正面のミドルシュートを取り損ね、こぼれ球への反応も鈍く"あわや失点"というシュートを許した。また、裏への縦パスに出遅れ、相手と交錯した場面はPK判定でもおかしくなかった。
鈴木はプレミアリーグ、アストン・ヴィラに移籍し、名手ティボー・クルトワ(ベルギー代表、レアル・マドリード)のような超一流GKと同列に語られることがある。確かに一瞬の反応、キックの精度、パンチング力などは世界トップクラスだろう。しかし、キャッチの判断と精度は相変わらず不安要素で、率直に言って過大評価されている。
そして、もし鈴木が準備できていない状況だったら、起用する必要はあったのかという疑問もある。試合途中でGKが出場し、流れに適応するのは簡単ではない。この交代のせいではないが、ケガをした渡辺剛がベンチに下がると、最後は10分間、ひとり少ない状態でプレーを余儀なくされた。
北中米ワールドカップ後の森保ジャパンは、新たな船出で人材を入れ替えようとしている。その不安定さはGKに一番色濃く出ているかもしれない。ウルグアイ戦でも早川友基が安定感に欠けるプレーを見せていた。
最後にPKを決めきり、またも勝利の殊勲者になった上田は"勝って兜の緒を締めた"。
「結果はすばらしいですね。アジアカップに向けてもシビアな展開は予想されるし、90分で勝ちきることができてよかったです。ただ、ゲームのなかで完成度を高めていかないといけないし、全部が全部、いいわけではないですね」
日本が勝利に値しなかったとは言わない。しかし、現状は「勝てば官軍」と言ったところか。主力選手が状況を冷静に把握しているのは救いだ。
次戦は10月1日、横浜。南米の伏兵エクアドルとの対戦が待っている。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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