サッカー日本代表のバーレーン戦大勝もスペインの名指導者は「緩慢」と指摘 久保建英へ苦言も

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「すばらしい勝利だ。しかし、前半に関して言えば、実りのあるプレーは少なかった」

 スペインの慧眼、ミケル・エチャリはそう言って、2026年W杯アジア最終予選、日本がアウェーでバーレーンを5-0で下した試合を振り返っている。

「3-4-3(3-4-2-1)の新システムは、成熟しつつある。ただ、前半はプレーの判断がやや遅れていたことで、スローな印象を与えた。それが緩慢な試合展開の理由だろう。その点は中国戦と変わらず、修正点と言える。W杯ベスト8のような強豪と対戦した場合、その出遅れは必ず突かれるし、その時の守備のストレスは巨大で(バーレーンの比ではなく)、攻撃の精度も下がるはずだ」

 レアル・ソシエダで約20年に渡って、強化部長や育成部長など様々な役職を務めてきたエチャリは、あえて苦言を呈した。大勝のなかにこそ、看過できない「次の敗因」が潜んでいるからだ。

「完勝」

 そう見える試合が危ない。

 エチャリは日本代表について、過去にも暗示的な指摘をしてきた。2010年南アフリカW杯では守備の弱さを見抜き、アンカー起用を提唱。2014年ブラジルW杯では自信過剰で前がかりになった攻撃バランスに警鐘を鳴らしていた。

 大勝のバーレーン戦をどう分析したのか?

バーレーン戦でミケル・エチャリがその判断、動きを高く評価した守田英正 photo by Fujita Masatoバーレーン戦でミケル・エチャリがその判断、動きを高く評価した守田英正 photo by Fujita Masatoこの記事に関連する写真を見る「日本は、立ち上がりから優位に立っている。3-4-3を着実にものにしつつある。もともと日本は機動力に優れた選手が多く、攻撃を分厚くする戦いは理にかなっている。

 遠藤航、守田英正のふたりのMFは、このチームの土台と言えるだろう。ふたりはどんなシステムにも適応できるはずで、バランス感覚は秀逸。前後左右のポジションの取り方が極まりつつある。ふたりがいいポジションを取ることで、システムも成立している。

 前半30分をすぎた頃、バックラインから南野拓実にボールが入って、これを守田に落とす。守田はすかさずダイレクトで裏に送った。これはカットされたが、再び遠藤が拾って、右サイドを抜け出した鎌田大地にパス。このクロスがスライティングに入った相手選手のハンドでPKの判定になった。

 この先制点だけでも、守田、遠藤が戦術的にどれほど重要かわかるだろう」

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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