パリの舞台に立つサッカー五輪代表18人は誰になる? 識者3人が考えたOA枠、海外組の選考 (3ページ目)

【複数のポジションができる選手の見極めは簡単ではない】

小宮良之(スポーツライター)

この記事に関連する写真を見るFW:細谷真大(柏レイソル)、藤尾翔太、平河悠(以上FC町田ゼルビア)、斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)、山田楓喜(東京ヴェルディ) 
MF:鈴木唯人(ブレンビー)、荒木遼太郎(FC東京)、藤田譲瑠チマ、山本理仁(以上シント=トロイデン)、福井太智(ポルティモネンセ)、山根陸(横浜F・マリノス) 
DF:バングーナガンデ佳史扶(FC東京)、木村誠二(サガン鳥栖)、西尾隆矢(セレッソ大阪)、高井幸大(川崎フロンターレ)、関根大輝(柏レイソル) 
GK:小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、鈴木彩艶(シント=トロイデン)

「オーバーエイジ(OA)枠3人は誰に?」

 パリ五輪出場決定後、その議論が活発に展開されている。個人的には、FW上田綺世(フェイエノールト)、MF守田英正(スポルティング)、DF板倉滉(ボルシアMG)を入れることで、「縦のラインがどっしりとし、戦いに幅が出る」と考える。同時に弱いポイントへの補強にもなるだろう。

 しかし現実的には、「パリ世代で戦う」と覚悟し、準備を整えるべきではないだろうか。

 そもそも、OAは誰を選ぶか、という話で収まらない。なぜなら、五輪はクラブに派遣義務がなく交渉ありきで、それは難航するからだ。パリ世代の久保建英でさえ、すでにクラブに難色を示されている。今年1月のアジアカップでも、招集されたあとコンディションが下降したことを考えたら、当然の判断と言えるだろう。

 過去の五輪でも、OAは必ずしも補強につながらず、足手まといになることもあった。ファーストチョイスではないOAを選ぶのは本末転倒。2008年の北京五輪メンバーのように、OAなしで惨敗しても、本田圭佑や長友佑都などが挫折をバネに羽ばたいていったケースもあるだけに...。

 率直に言って、パリ五輪もU-23アジアカップで出場権を勝ち取った選手が主力になるべきだろう。大会ベストイレブンに相当する小久保玲央ブライアン、藤田譲瑠チマ、荒木遼太郎などは外せない。彼らが本大会の舞台にも立つのが正当だ。

 もっとも、大岩剛監督が率いるようになったU-21代表からの活動が現チームの原型だけに、U-23アジアカップで招集できなかった欧州組の派遣交渉には手を尽くすべきだろう。

 デンマークでカップ戦も含めて二ケタ得点の鈴木唯人、オランダ1部で攻撃の中心になっている斉藤光毅、バイエルンのセカンドチームで定位置をつかんでポルトガル1部でも試合に出ている福井太智などは、戦力アップの人材になる。言うまでもないが、異国で試合を重ねてきた選手は必然的に適応力も高く、正念場で力を発揮するはずだ。

 問題は、(U-23アジアカップの23人から18人に)人数がさらに絞られる点だろう。複数のポジションができる選手を選ぶ必要もある。その見極めは簡単ではない。

 個人的には、横浜F・マリノスでインサイドハーフ、アンカー、両サイドバックを経験している山根陸のような"サッカーIQの高い"選手も選択肢に入れるべきだと考える。FC東京で頭角を現している俵積田晃太のような"崩し"に特化したサイドアタッカーも推したい。欧州スカウトだったら垂涎の的のはずだが、18人だと前線でユーティリティとなる藤尾翔太のような選手が優位か。

 限られた人数での短期決戦だけに、組み合わせも大事になるだろう。

著者プロフィール

  • 浅田真樹

    浅田真樹 (あさだ・まさき)

    フリーライター。1967年生まれ、新潟県出身。サッカーのW杯取材は1994年アメリカ大会以来、2022年カタール大会で8回目。夏季五輪取材は1996年アトランタ大会以来、2020年東京大会で7回目。その他、育成年代の大会でも、U-20W杯は9大会、U-17W杯は8大会を取材している。現在、webスポルティーバをはじめとするウェブサイトの他、スポーツ総合誌、サッカー専門誌などに寄稿している。

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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