三笘薫、伊東純也の代役が町田にいた 多機能ウインガー・平河悠の日本代表招集に期待

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 三笘薫(左)と伊東純也(右)の両ウイングを欠いた状態で北朝鮮戦とのホーム&アウェー戦に臨むことになりそうな日本代表。その代役は、従来の序列でいけば左・中村敬斗、右・堂安律の先発が有力視される。久保建英を1トップ下で起用しない場合は、彼をそのまま右にスライドさせる手もあるが、ウイングが左右1枠ずつ空いていることに変わりはない。

鹿島アントラーズ戦でJ1初ゴールを決めた平河悠(町田ゼルビア)photo by Kyodo news鹿島アントラーズ戦でJ1初ゴールを決めた平河悠(町田ゼルビア)photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る 誰をどう使うか。左で有力視されるのはカタールW杯代表の相馬勇紀、元日に行なわれたタイ戦で代表デビューを飾った奥抜侃志あたりか。右は右利きに限定すると難しくなる。左利きでは、つい1月前なら、コベントリーで圧倒的なパフォーマンスを見せつけていた坂元達裕を推していたが、三笘同様、大怪我に見舞われ長期離脱となった。

 右利きの伊東と同タイプをあえて探すなら仲川輝人だ。しかし、FC東京のウイングでいまそれ以上に新鮮に見えるのが、左ウイングの俵積田晃太だ。同チームで完全にスタメンに定着しているわけではない。その点はマイナス要素になるが、ウイング天国と化した日本サッカー界を象徴する期待の19歳を抜擢することは、アジアカップでまさかのベスト8に沈んだ喪失感を払拭する施策として有効だ。

 そして、招集により必然性を感じるのは町田ゼルビアの23歳だ。J1でプレーする今季は立派な招集対象になる。3月9日の鹿島アントラーズ戦で左ウイングとして先発した平河悠。J1初ゴールとなる決勝ゴールも決めた、いまが旬なウインガーである。

 開始2分。何よりこの試合のファーストタッチに目は釘付けになった。自軍深くのライン際で魅せた左足→右足での連続タッチである。その2歩目の右足でボールを押し出すようにスルスルと抜け出し、MF仙頭啓矢にパスをつける様は、もはや代表級、あるいは欧州組級と言いたくなる、鮮やかさをともなう絵になる躍動感だった。

 鹿島の新監督、ランコ・ポポヴィッチは試合後、自軍の試合の入り方の悪さを嘆いたが、筆者は、キックオフ直後の平河のこのプレーを見て、鹿島が身構えてしまった可能性を指摘したい。自分たちのほうが格上だと思っていたら、相手の左ウイングにいきなり高度なボール操作を披露され、平常心を失った、との見立てに大きな間違いはないはずだ。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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