日本代表・遠藤航の武器は「眼の速さ」。風間八宏が解き明かす「デュエル王」の正体
第6回:遠藤航(シュツットガルト/日本)
独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、国内外のトップクラスの選手のテクニック、戦術を深く解説。第6回は、日本代表の不動のボランチとして定着した遠藤航のプレーを取り上げる。ブンデスリーガでデュエル王となっている球際のプレーは何かすごいのか、分析してもらった。
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ボールを奪うテクニシャン
森保ジャパンの発足以来、チームに欠かせない不動のボランチとして活躍してきた遠藤航。6月に中3日の強行軍で行なわれた日本代表4連戦では、キャプテンの吉田麻也とともに全試合でスタメン出場を果たすなど、その存在感は増すばかりだ。
そんな遠藤の最大の特徴が、球際の強さである。2019年から所属するシュツットガルト(ドイツ)では、直近2シーズンで"デュエル王"の座に君臨。つまり、1対1の勝負において、ブンデスリーガでナンバーワンの強さを数字として残しているというわけだ。
ブンデスリーガのデュエル王。日本代表でも欠かせない存在の遠藤航この記事に関連する写真を見る 従来の一般論では、日本人選手は外国の選手と比べてフィジカル的な部分で劣っているとされてきたが、遠藤はそれを覆したと言っても過言ではない。そんな遠藤のデュエルの強さについて、風間八宏氏はどのように分析するのか。
「多くの人は、強さ、あるいは力によってボールを奪っているかのようなイメージを持っているかもしれませんが、遠藤の球際の強さというのは、決して力に頼っていない。まずは、そこを誤解してほしくないですね。
もちろん、力強さがないと言っているわけではなくて、よく見てみるとわかると思いますが、遠藤の場合は球際でのうまさが際立っています。相手の懐に入る技術、相手の動きを止める技術、そしてボールを奪う技術が高い。だから、球際で力と力のぶつかり合いになるような体の当て方はしていません。
デュエルと聞くと、どうしてもお互いが10と10の力でぶつかり合うような印象を受けてしまうかもしれませんが、実は球際の攻防では、足を出さないほうがボールを奪えることもあれば、敢えて相手にボールを触らせるほうが奪いやすいケースもあります。時には、相手のボールに向かうのではなく、先に相手の体に当たって動きを止めてからボールを奪う場合もある。そこには、高度な技術と判断力が潜んでいます。
たとえば、ベルギー代表のロメロ・ルカクが10のパワーで来ている時に、10の力で対抗しようとしてもなかなか勝てない。でも、ルカクの力が5の時にこっちが10のパワーを使えば絶対に勝てる。
遠藤は、そういったことをよく理解していると思います。そういう意味では、デュエル王という表現よりも、ボールを奪うテクニシャンという表現のほうが適切なのかもしれませんね」
力ではなく、テクニック。確かに遠藤がボールを奪うシーンを見てみると、ボールホルダーに対して複数回のアタックから奪うシーンもあれば、背後から身体を入れて奪うシーン、あるいは相手の体に触れずに奪うシーンなど、そのテクニックは実に多彩だ。
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