サッカー日本代表に上々の辛勝。ブラジルは手を焼いたが「課題が出ただけ」だった (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

ネイマールは相当苛ついていたが...

 ギリェルミ・アラーナは対面した伊東純也のスピードを一度の対決で理解し、決定的プレーを許していない。また、後半に投入された三笘薫の対応に、エデル・ミリトンは最初、やや後手に回ったように見えたが、すぐに間合いの設定を変え、そこからは完封した。

「僕の1本目の仕掛けで、ミリトンは立ち位置や体の向きとかを変えて、2本目からの対応力を感じました。そこはプレーを切り替えられるようにならないと......」

 三笘は苦々しげに振り返っている。彼の崩しは可能性を感じさせたが、格の違いがあったのは事実だ。

 もっとも、試合が長くスコアレスで推移し、ブラジル陣営が苦労したのは間違いない。たとえばネイマールは、ことあるごとにピッチに倒れていたが、これはうまくいっていない時、もしくは士気が低い時のひとつのサインである。わざと吹っ飛ぶように倒れ、カードを誘発し、有利に試合を運ぼうとするマリーシアとも言えるが、そのあざとさを使うほど、点が入らないことに苛ついていた。

「ハイレベルな戦いだったと思います。両チームが高いクオリティを示し、W杯レベルの対戦でした」

 ブラジル代表監督であるチッチが好意的に振り返る一方、かつてJリーグでプレーし、アシスタントコーチを務めるセザール・サンパイオもこう賛辞を送った。

「韓国、日本と連戦を行なったが、どちらも似通ったプレーモデルと言える。ただ、韓国は動きが多く、フィジカル的で、日本はテクニック重視、4バック+アンカー、4バック+ダブルボランチと、守備ブロックを固めていた。森保監督が作ったメカニズムで、『8試合負けなし』というのもうなずけた」

 ブラジルのリズムが、日本の善戦で狂ったのは事実だが、「ブラジルの課題が噴き出ただけ」とも言える。

 王国の強さを誇った時代、セレソンには絶対的ストライカーがいた。ロマーリオ、ロナウド、アドリアーノは怪物級だった。彼らが仕留められる力を持っていることで、周りの得点も増えた。現在のセレソンはネイマールがエースだが、いわゆるストライカーではなく、日本戦のように不発だとチームも途端に苦しむことになる。チッチ監督によってソリッドな守りは構築できたし、両サイドに得点源を作ろうとしているが、「ネイマール頼み」は深刻だ。

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