スペインの戦術家はキルギス戦に苦言
「ボールを失う機会が多すぎる」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AP/AFLO

「収穫としては乏しい試合だった。日本はボールを失う機会が多すぎ、攻撃を作れず、カウンターも浴びた。コンビネーションに欠け、サイドからの攻撃も有効でなく、試合を通じて苦しんだ」

"スペインの目利き"ミケル・エチャリ(73歳)は、キルギスに0-2で勝利した日本代表の戦い方について、率直に指摘をしている。

 エチャリは指導者として、元ヴィッセル神戸監督のフアン・マヌエル・リージョを十代の頃から手ほどきしてきた。多くの選手、指導者に強い影響を与え、「ピッチで大切なのは、数的優位ではなくポジション的優位」という言説を広めたのも彼である。"戦術マスター"とも言えるだろう。

「キルギス戦の勝利は重要なものだった。しかし、いつもの日本のプレーはできていない。ボールを失う場面が多すぎた。得点はPKとFKだけで、攻め崩したシーンは少なかった」

 珍しく日本代表に懸念を示したエチャリは、この試合の細部をどのように見たのか。

キルギス戦ではビルドアップに苦しんだ柴崎岳と吉田麻也キルギス戦ではビルドアップに苦しんだ柴崎岳と吉田麻也「日本はすでにひとつの形になっている4-2-3-1、もしくは4-4-2とも言えるシステムで挑んでいる。試合開始後しばらくは、相手の力を探るような時間帯だった。何度か手合わせし、日本の選手が技術的、体力的に優れていることは明白になった。そして14分には、右サイドの酒井宏樹(マルセイユ)のクロスに南野拓実(ザルツブルク)がヘディングで合わせ、決定機を作っている。

 しかし、キルギスはイニシアチブを譲らなかった。キルギスはMFエドガー・ベルンハルトが下がり目で、5-4-1に近いシステムだった。中盤でグルジギト・アリクロフが高いスキルを見せ、ボールを運び、縦に速く、裏を狙うカウンターを謀る。それが次第に功を奏していった。センターバックに高さのある選手を擁していたことで、FKからあわやの好機を作っている。権田修一(ポルティモネンセ)が好セーブを見せたが、結局、これはオフサイドの判定になった。

 日本はキルギスの守備に対して、ビルドアップでノッキング。ボールを前に運べなくなる。中盤やサイドでボールを失う機会が多く、そこでセンターバックの吉田麻也(サウサンプトン)がロングパスを狙うが、単発な攻撃に。前半、長友佑都(ガラタサライ)はほぼオーバーラップできず、攻撃は右に偏った。しかし右の酒井も珍しくボールを失うなど、全体に不具合が生じているのは明らかだった。

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