2012.10.01

【リトルなでしこ】攻撃サッカーで観客を魅了。
U-17女子が全勝無失点で決勝T進出

  • 早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko
  • photo by Hayakusa Noriko

 メキシコDF陣はドリブルで自由自在に動きまわる成宮に翻弄された。メキシコは成宮のドリブルに対応しきれず混乱し、その結果、日本は空いたスペースに次々と選手が効果的に入り込んだ。そうして相手の守備を崩した形から生まれた好機は数えきれなかった。

 そして22分、成宮が前線へ仕掛けた瞬間、白木がゴール前へ抜け出す。DFが追いつかない速いグラウンダーのパスが白木の前に流された。絶妙なパスからの追加点だった。

 さらに、井上綾香のゴールも生まれ、その直後の白木の2点目のゴールも、右サイドの井上(綾)からのニアへの速いボールに合わせたもの。このふたつのゴールも、練習で繰り返してきたパターンだった。練習ではなかなかピタリと合わせることができなかった形を選手は本番のピッチでやってみせたのだ。

 また、吉田監督はこの日の試合を含むグループリーグの3試合でフィールドプレイヤー全員の起用を果たした。GKにも井上ねねを起用し、GK小高愛理以外の全員がピッチに立ったことになる。しかし、ターンオーバーという言葉が当てはまらないほど、どの組み合わせで選手を起用しても戦力ダウンがないのがこのチームの強みだろう。

 しかも、彼女たちのサッカーは見る者を惹きつけ、次のゴールへの常に可能性を感じさせてくれるのだ。

 吉田監督の真骨頂は攻撃サッカーである。その実力は世界でも群を抜いている。そのスタイルを実行するための個性的な選手が揃っているのだ。

 ドリブルで切り込むプレイが得意なのはサイドMFの成宮、井上(彩)、籾木(もみき)結花、長谷川唯。ボールコントロールと的確なポジショニング、ゴール嗅覚を備えたFW増矢理花、長身FWの白木。左右サイドで効果的なオーバーラップを見せる清水と小島美玖の両SB。そして攻守に絶妙なバランスを見せるボランチコンビの中村みづきと隅田凛。誰が入ってもその攻撃力が落ちることはない。その圧倒的なまでの攻撃力はまさに「攻撃は最大の防御」を体現している。

 吉田監督のこのスタイルがグループリーグでは吉と出た。日本が入ったグループCは、戦ってみれば日本が頭ひとつ抜け出ていた。無失点というのは、日本がそれだけイニシアティブを取る時間帯が多く、同時に相手のカウンターをしっかりとケアできていたことを意味する。言い変えれば、カウンター以外で守備にまわることはほとんどなかったのだ。

 ただ、ピンチらしいピンチを経験することなく、ノックアウトの決勝トーナメントに臨むことは懸念材料のひとつではある。つい先日、日本で行なわれたU-20女子W杯準決勝で優勝候補に挙げられていたドイツと対戦したヤングなでしこは、それまでの相手とは格段にレベルが上のドイツに対し、後手に回ってしまった。もちろん、別の年代の異なるチームであるため同じ物差しで測ることはできないが、それと同じような事態にならないとも言えないだろう。

 しかし、次に対戦するガーナは、スピード、テクニック、フィジカルの当たりなど、すべてがグループリーグの相手より1枚上となるので、状況としては似通っている。このグループリーグと決勝トーナメントの対戦相手の力のギャップを、試合の中でいかに埋めるか。これは選手たちにとっては未知の世界であり、自分たちの力で乗り越えなくてはならない。