【日本シリーズ2024】DeNA連敗脱出 桑原将志が呼び込んだ勢い 「チャンスのあとにチャンスを作れ」
【ようやく掴んだ流れと勢い】
欲しかった「流れ」をついに掴んだ。
本拠地横浜での連敗から始まった日本シリーズ第3戦(10月29日)。舞台を福岡に変えてのベイスターズにとって負けられない戦いは、ケガ明けのエース東克樹を先発マウンドへ、4番にオースティンを復帰即時投入するという決死の覚悟で必勝を期した。
シリーズの1、2戦では早い回からワンポイントに回またぎにと中継ぎ投手を、微妙なプレーにはリクエストを惜しげもなく注ぎ込んだ文字どおりの総力戦。それでも攻守に隙のないソフトバンクホークスを相手に常に主導権を握られての戦いは、終盤に粘りを見せたものの、結果を見れば最悪の連敗スタート。
ほしいのは勢いだ。ベイスターズを日本シリーズの舞台にまで進ませた、とてつもない破壊力を秘めた最大の武器。連敗から移動日でひと息ついて、再び空気が動き出す第3戦。嫌な空気を払拭し、先に試合の流れを掴むためにも、どうしてもほしいのが先制点。つまり、初回こそがこの試合の最初の大きな山場であるとも言えた。
「やっぱり先に流れを掴めるかが大事な試合でしたからね。初回の先頭バッター、とくに今日は先攻になったことで、よーいドンで打席に立つわけですから、ここで勢いを出せるかどうかが大きかったと思います」
と言うのは、1998年の日本シリーズ第1戦の第1打席でセーフティバントを決め電光石火の先制点でマシンガン打線に火をつけた球団史上最高のリードオフマン・石井琢朗コーチ。
「梶原(昂希)という選択肢もあるんだけど、やはりそこで勢いを出せるのは桑原(将志)だろうということです。初球から積極的に振っていくスタイルは、もちろん逆のパターンでチーンと沈んでしまう場合もあるんですけど、シリーズは一発勝負。桑原の勢いというものに期待しました」
2回裏、ファインプレーを見せたDeNA桑原将志 photo by Kyodo News
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著者プロフィール
村瀬秀信 (むらせ・ひでのぶ)
1975年生まれ。神奈川県出身。茅ケ崎西浜高校野球部卒。主な著書に『止めたバットでツーベース 村瀬秀信 野球短編自撰集』、『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ 涙の球団史』、『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』など。近著に『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』がある。