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「完全なアーム投げだった」山本由伸を高山郁夫がいじらなかった理由 「指先の感覚を狂わせたら終わってしまう」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

── 今までもそんな例はあったのでしょうか?

高山 ソフトバンクのコーチ時代に和田毅を見て、個人的には「きつい投げ方をするな」と思っていたんです。でも、彼と接して一緒に野球をやっていくなかで、あの投げ方が彼にとっていいことがわかってくるんです。なによりも、ケガをしない。私はプロ野球選手にとっての究極は、そこだと思うんです。ケガをせずに、結果を残す。その経験があったから、由伸に対しても自然に接することができたのだと思います。

【2年目はセットアッパーだった理由】

── 山本投手の2年目はセットアッパーとして54試合に登板、32ホールドを挙げて防御率2.89。20歳と思えば上々の成績でした。

高山 プロ1年目に中10日空けないといけないコンディションだったので、2年目は短いイニングを投げさせようということになりました。ただし、3連投は絶対にさせないという方針で。3年目からは本人の希望もあって、先発に戻りました。

── オリックスは年間通して投手に無理をさせない運用をしていますよね。

高山 中嶋聡監督になってから、より顕著になったと思います。年間200イニングを投げさせることもないですよね(山本の年間最多イニング数は2021年の193回2/3)。首脳陣からすれば、リリーフでも毎日いい投手がいてくれたほうが安心なんです。でも、「もっとやれたはず」という選手がケガをして、2〜3年くらいでボールの質が低下してしまうことも多かった。中嶋監督になってから、長い目でチームを変えていこうという意図をはっきりと感じました。すごくいいことだと思います。

── 選手は「今日も行けるか?」と言われれば、意気に感じて無理してでも投げてしまうわけですからね。

高山 せっかく能力のある投手が3年でいなくなるなんて、本意ではありません。もちろんペナントを争っているわけなので、根性論のすべてが悪いわけではありません。それでも、これだけ情報が得られる時代なのですから。考え直すべきところは直したほうがいいですよね。

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