投手力だけじゃない! 未来のスラッガー候補の雄大な打球に「強打のオリックス」の未来が見える (3ページ目)
その横山とは対照的に、「ボールを呼び込んでドカン!」と打つタイプの内藤。高校時代はもっと軸足体重で構えていたように思うが、150キロを超すプロの剛球に木製バットで立ち向かうには、体重移動と下半身主導のスイングが必須条件なのだろう。
右足の足首からねじり上げて、その下半身のアクションの反動でバットが振られる。バットのヘッドが最後に出てくるため、遠心力を利用して遠くまで飛ばすことができる。腕っぷしの強さだけで、強引に飛ばそうとする意識は皆無。全身の連動でサラッとバットを振り抜いて、雄大な放物線を描いてスタンドイン。
高校時代から「4番」しか似合わない選手だった。高校通算53本塁打の飛ばし屋だったが、「4番らしさ」の理由は、本塁打だけじゃない。
指揮官が望むのは、タイムリーが打てるポイントゲッターとしての勝負強さだろうし、相手投手を怯ませる威圧感であり、存在感だろう。
「チームで一番野球がうまいのに、いつも(内藤)鵬が最後まで練習している。あの大きな体で守備もうまいし、ディレードスチールも仕掛けられる。すべてにおいて、すごいっすよ、鵬は」
あるチームメイトはこんな話をしてくれ、「鵬はオレたちの誇りです」と締めてくれた。
「もうやめろと言っても聞かないんですよ」と、日本航空石川の中村隆監督もあきれるほど練習していた手は、どんなものかと見せてもらったら、"サザエ"みたいになっていたから驚いた。マメがつぶれて、そのなかに新しいマメができ、そのマメがゴツゴツにとんがっていた。
そこまでやらなくても......と、見ているこっちが心配になったが、「自分で決めたことですから」とひと言。高校生にして、この覚悟はなんなのだろうかと思ったものだ。この時から、私のなかの4番打者の条件に「敬意」という条項がひとつ加わった。
なんだか、近未来のオリックスの若きクリーンアップの競演を見せてもらったような気がした。もちろん、途方もない「先物買い」であることは十分理解している。プロには準備されたポジションなどなく、相手チームと戦う前にまずはチームメイトたちとの戦いが待っている。
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