2021.07.22

高校野球未経験の和田康士朗はなぜ独立リーグ入団から1年でロッテ入りを果たせたのか

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by ©️ Toyama GRN Thunderbirds

 BCリーグでの成績は、68試合に出場して打率.271、1本塁打、14打点、14盗塁。ドラフト候補と考えれば物足りない数字だが、その資質はNPBスカウトから高く評価された。ドラフト会議前には6球団から調査書が届いた。

 10月26日のドラフト会議では、早稲田実の清宮幸太郎(日本ハム)が7球団から重複1位指名されて話題を独占した。無名の独立リーガーである和田康士朗の名前は、育成ドラフトが開会して最初に呼ばれた。指名したのは、いち早く和田に着目していたロッテである。

 和田は「まさか1年でNPBに行けるとは」と驚きつつも、その一方で悔しい感情も抱いたという。

「一番は支配下のドラフトで指名されることだったので、そこで行けなくて悔しい気持ちもありました。うれしさと半々でしたね」

 平日を無為に過ごしていた「帰宅部」の時期を思えば、望外の出世にも思える。だが、和田の目標はすでにNPBにたどり着くことではなく、NPBで活躍することに変わっていた。

 2020年6月1日、春先からアピールに成功した和田は、プロ3年目にして念願の支配下登録を勝ち取る。背番号は122から63へと軽くなった。そして迎えた6月19日のソフトバンクとの開幕戦。和田は1点を追う9回表、無死一塁という重要な場面で、代走としてプロ初出場を果たす。

 この場面を当時、日本ハムの二軍打撃コーチを務めていた吉岡はテレビにかじりついて見守っていた。

「開幕前の練習試合からよく走っていましたけど、公式戦では緊張感や雰囲気が全然違います。走れたらいいなと思いつつ、警戒されるなかでしかも捕手は甲斐(拓也)ですから。難しい場面だなと」

 当の本人は「頭が真っ白」だったという。

「最初は『行けるなら行け』ということだったんですけど、本当に頭が真っ白という感じでした。途中で(二死後のカウント2ボール、2ストライクから)盗塁のサインが出て......。『もうどうにでもなれ』と走りました」