菊池雄星が語った絶対的エースへの道。8年目の快投を自ら分析する (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「自分の体と対話することは今も大事にしています。自分の体を客観視できずに、ブレーキを踏めずにアクセルばかり踏んでしまって、練習量が多くなり過ぎてケガをするパターンが続いているので。それは年々精度を高められているのかなと思います。フォームに関しても、今はほとんど何も考えていません。ただ、1球ごとに『なぜそこに行ったか』ということを説明できないといけないと思っています。今までは調子がよければいくし、悪ければダメ......という感じでしたが、今は『ちょっと突っ込んだからダメだったな』とか、『腕のタイミングが遅れたな』と自分のなかで説明できるようになってきたのかなと。だから練習中や試合中に1球ごとに微修正ができるようになりました。今まではどうすれば修正できるかわからなくて、『なんでここに行かないんだろう』と頭で考えてうまくいきませんでした」

 こうした「肉体との対話」を経て、春季キャンプではある手応えをつかんだ。それは「軸」に対する感覚だ。

「今は局所を意識するのではなく、おおまかに『軸』を考えています。目に見えないものなので説明が難しいんですけど......、一番のポイントは頭ですかね。頭の突っ込みだったり、投げる瞬間に頭を振ってしまったりすることが、軸を崩してしまう原因なのかなと。僕の場合は、そこをすごく意識しています」

 今までも軸の大切さを説かれることはあったが、ようやく自分のメカニズムに合った、確固たる感覚をつかむことができた。その結果、フォームのバランスがよくなり、今まで以上に腕が振れるようになったという。

「軸が取れずに腕を振ろうと思っても、どこにいくかわからないから怖いんですよね。今は軸が取れて、いい意味で力める。その状態になれば、状況に応じて『次はどれくらい力を入れようか』と微調整ができるようになるんです」

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