【プロ野球】中村紀洋、戦力外から掴んだ8年ぶりの球宴に懸ける思い (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Nikkan sports

 91年にドラフト4位で近鉄に入団してからは、強烈なプロ根性で戦い抜いてきた。入団1年目に打撃フォームの改造を首脳陣から迫られたが、頑(かたく)なに拒否。「打てるか打てないか、一度でいいから一軍に上げてください」と直訴し、巡ってきたチャンスで見事な一発を放った。それから若手の指導に定評があった水谷実雄氏の猛練習に耐え抜き、一気に頭角を現したのが90年代半ば。

 筋肉の裂ける音が聞こえるほどの肉離れを起こしても、患部をテーピングでグルグル巻きにしてバットを振り続けた。足の指を骨折した時も、スパイクの先を切り取って痛みを和らげ試合に出続けた。

 そんな中村が挑む8年ぶりのオールスター。近鉄時代から時間の許す限り球場へ足を運んできた両親は、「もちろん観戦します」と声を弾ませた。第1戦が行なわれる京セラドームは、かつて中村が頂点を極めた思い出の球場。当時を知るファンの前で、どんなプレイを見せてくれるのか。

「ヒットじゃつまらないでしょうから、全打席ホームランを狙って、思い切り振っていきたい。以前、オールスターで3試合連続ホームランを打ったこともあるので、今回も3試合連続で打てるように頑張ります」

 万感の思いを秘め、8年ぶりの夢舞台に立つ中村の豪快なフルスイングを堪能したい。

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