【高校野球】左投げの捕手&三塁手、ダンゴムシ打法...25年前、甲子園で異彩を放った個性派集団・那覇高校の戦い (3ページ目)
【沖縄水産を延長で破り甲子園出場】
夏の県大会が始まり、目標は「甲子園出場」と掲げていたものの、誰も本気で行けるとは思っていなかった。
初戦の南部商に10対0で勝利すると、2回戦は具志川に8対2、3回戦は浦添に8対1。ここまでは勝ち進めると思っていたが、準々決勝で春季大会優勝校であり第1シードの中部商に6対2で勝ったことで勢いがついた。
そして準決勝の相手は、前年の秋季大会準優勝の浦添商。
「準決勝の浦商戦で、ピッチャーの成底がケガをしたんです。背筋がボコッと膨らんで、まるでふくらはぎのようになっていました。試合は0対0だったので、『勝ち越すまでは監督に言わないでくれ』と告げられ、7回にようやく勝ち越して......結局、最後は継投して2対1で勝ちました。しかし、その後は『さあ、決勝戦をどうするか』という状況でした」
決勝は名将・栽義弘監督率いる沖縄水産。じつは那覇のエース成底は県内屈指の好投手だったため、那覇は栽から何度も練習試合を申し込まれていた。だが、甲子園出場はおろか、全国でも上位進出を目指す沖縄水産の前にいつも大敗を喫していた。
決勝戦、那覇は二番手の豊原啓人が先発した。ツーシーム系の球が面白いように決まり、沖縄水産打線を封じていく。そして試合は3対0と那覇のリードで9回を迎えた。
9回無死満塁からエースの成底が登板するも同点とされ、試合は延長に突入。それでも那覇は10回表に2点を勝ち越し、その裏を0点に抑えて勝利。夏の甲子園初出場を決めた。
優勝が決まった瞬間、三塁側スタンドにいた那覇高校の大応援団がいっせいに下に駆け寄り、フェンスを壊すという珍事が起こるほど、北谷公園野球場は歓喜の渦に包まれた。
長嶺は言う。
「甲子園では対戦相手のことより、成底のケガが心配で......。ただ、幸いにも初戦が大会7日目になったことで、なんとか間に合いました」
エースが回復したことで、選手たちは気後れすることなく試合に臨めた。
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