【高校野球】左投げの捕手&三塁手、ダンゴムシ打法...25年前、甲子園で異彩を放った個性派集団・那覇高校の戦い (2ページ目)
【短時間で質の高い練習を追求】
那覇は、旧制二中として県下有数の進学校であり、戦後はアメリカ軍の砲撃で球場が壊れたため、県大会が那覇高校のグラウンドで開催されるほど由緒ある学校でもある。
進学校ゆえに、練習時間は夏場でも多くて3時間、冬場は2時間しかとれない。当時は、沖縄水産や沖縄尚学のツートップに加え、浦添商や中部商といった商業系の公立高校が奮闘し、県内を席巻している時期だった。
そんななかでの那覇の大躍進は、なんといっても外部コーチから監督に就任した池村英樹の手腕によるところが大きい。とにかく2年半という限られた時間の高校野球で、那覇高校の設備や練習量を考慮すると、短所を矯正して勝負に耐えうる準備まで手が回らない。そこで池村は、短所を補うよりも長所を最大限に生かす方針を採用。バッティングも、コツコツ当てるスモールベースボールではなく、バットにボールを乗せて遠くへ飛ばすスタイルを推奨した。
「強豪校が10の練習量で1を知るなら、ウチは2の量で1を知れば対等だ」と選手たちに説き、限られた時間のなかで効率化を徹底するため、準備の大切さを叩き込んだ。
グラウンドを全面使える時間が1時間しかない場合、残りの時間をどう有効活用するかを自分たちで考えた。ソフトボール部やラグビー部が使っている時間帯でも、内野は使用可能なため、内野ノックやバント練習をすぐに始められるように機敏な動きで準備をする。
また、メンタルトレーニングにも余念がなく、リラックス効果を確かめるために練習試合では選手にガムを噛んでプレーさせたり、スポーツ飲料やプロテインなど、いいと思ったものはどんどん選手に提供した。
水分補給にしてもわざわざベンチに戻る時間が惜しいため、コーチャーボックスやファウルゾーンに水を置いておき、自由に飲むことができた。すべては短い時間のなかで質の高い練習をやるためだ。
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