センバツで好投、E判定の東大に宅浪で合格...野球と勉強をともにレベルアップしていく松本慎之介のスタイル

  • 門脇 正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

文武両道の裏側 第19回
松本慎之介(東京大学野球部)後編(全2回)

 東京大学に期待の新人左腕がいる。國學院久我山高で甲子園ベスト4に貢献し、浪人を経てこの春入学した松本慎之介だ。そんな彼の文武両道の裏側を探るべく、東大球場を訪ねてインタビュー。後編では、甲子園の思い出や浪人生活、東大での日々について聞く。

東京・文京区の東大球場でインタビューに応じた松本慎之介東京・文京区の東大球場でインタビューに応じた松本慎之介

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【甲子園はめちゃくちゃ気持ちよかった】

ーー松本さんは國學院久我山高3年の時(2022年)、センバツに出場し、甲子園の目標を現実のものとしました。自分のなかで甲子園に手が届きそうだなと思ったのは、いつぐらいからになりますか?

松本慎之介(以下、同) 高校2年の夏の大会ですね。運よく、僕はベンチ入りすることができました。あんまり試合には出られませんでしたが、チームは決勝で負けちゃって、それがすごく悔しくて、自分の代では絶対に甲子園に行きたいと強く思いました。

ーー松本さんの代の、國學院久我山の強みはどこにありましたか?

 小技ができるところですかね。飛び抜けた選手はそんなにいなかったんですけど、強いチーム相手に、チームバッティングでうまく試合を運んで、負けていてもひっくり返して最後には勝っている、という強みがありました。

ーーそしてセンバツの2回戦の高知戦に2番手で初登板し、5回2失点でチームを勝利に導きました。初めて甲子園のマウンドに立った感想は?

 もうマウンドに立った時、めちゃめちゃ気持ちよくて、すごく楽しかったです。甲子園自体は、テレビで見ているのと同じなんですけど、でも、ちょっと違うみたいな......。こんなんだったんだ!って。そう思ったら、すごく鳥肌が立ったりしてきました。

 目標の舞台のマウンドに立った瞬間、とにかくうれしかったのを覚えています。これまでやってきたことが、なんかつながった、やっぱり野球をやっていてよかったなって思いました。

ーー準々決勝の星稜戦では、4対2で國學院久我山がリードするなか、9回無死一塁でマウンドに立ち無失点に抑えました。大ピンチで登板した心境は?

 もう興奮状態ですね。これはオイシイ!って、正直思いました。ここで抑えたら、カッコいいなみたいな(笑)。

ーーそして、星稜戦の勝利で初のベスト4進出を果たした國學院久我山の前に立ちはだかったのが、あの大阪桐蔭でした。

 本当にヤバかったですね。とにかくレベル高いっていうか、こういうチームが勝ち上がっていくのか、と。それくらいレベルの違いはありました。全然通用しなかったので、正直、ちょっと名前負けしていたというのもあって、今思うとビビっちゃってたなと。

ーー大阪桐蔭戦では、松本さんは2番手で投げて5回4失点。この試合を振り返ってみて、こうしたら勝てたかもしれないというのはありますか?

 いやー、ちょっと厳しいですかね。ボロ負けだったし、個人的には、もうちょっと低めに投げられたら、もう少しよかったなというのはあるんですけど。でも、大阪桐蔭とやってすごく刺激を受けたので、もう1回やりたいな、次やって勝ちたいなっていうのはありました。

ーーそして、高3夏の西東京大会。國學院久我山は準々決勝で国士舘に8対2で敗退してしまいます。

 どこもレベルが高くて強かったんですが、夏の甲子園は本当に行きたかったんで、悔しかったです。春の甲子園のあと東京に戻ってから、自分たちが勝てたのは個々の力が強かったんじゃなくて、試合運びのうまさとか、そういうところだったんだなとすごく感じていて。他のチームは、そんな自分たちを上回るところがあったんだろうなと思いました。

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プロフィール

  • 門脇正法

    門脇正法 (かどわき・まさのり)

    マンガ原作者、スポーツライター。1967年、埼玉県生まれ。日本女子体育大学大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。アニメ『ドラゴンボールZ』の脚本家である小山高生氏からシナリオを学び、マンガ原作者デビュー。特にスポーツアスリートの実録マンガを得意としており、『世界再戦ー松坂大輔物語ー』(集英社/少年ジャンプ)、『好敵手ー室伏広治物語ー』(同)、『闘球「元」日本代表ー福岡堅樹物語ー』(集英社/ヤングジャンプ)の原作を担当。現在はマンガの原作だけでなく、「少年ジャンプ」のスポーツ記事特集『ジャンスタ』を中心に、『webスポルティーバ』の「文武両道の裏側」など、スポーツライターとしても活躍中。著書に『バクマン。勝利学』『少年ジャンプ勝利学』(ともに集英社インターナショナル)などがある。

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