今から「Amazon」をつくるのは難しい 高校野球部生が学ぶ新規ビジネスのあり方

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

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 集英高校の野球部顧問を務めながら、家庭科の授業で生徒たちに投資について教えている奥野一成先生から、経済に関するさまざまな話を聞いてきた3年生の野球部女子マネージャー・佐々木由紀と新入部員の野球小僧・鈴木一郎。これまで投資について考えてきたふたりだが、しだいにこれらの理論を具体的に自分の人生にあてはめて実践してみたいと思うようになっていた。

 投資的な考え方と自分のこれからの人生――まず直結するのは、「自分がこれからどのような職業を選択するか」だった。前回は、「ふたりが好きな野球に関連した仕事に就くためにはどうすればいいのか」という話を聞いた。3人の会話は次の日も続いた。

奥野「まず、ここまでをちょっと整理しておこうか。

 野球に関する仕事としての頂点は、プロ野球の選手になること。それは疑いようのない事実だけど、問題は極めて狭い門だということだよね。プロ野球選手になれる人なんて、本当にごく一部だし、仮になれたとしても、レギュラー選手であり続けるのはめちゃくちゃ大変で、しかも選手寿命は極めて短い。

 そうなると、野球が好きな人にとって、関連の仕事に就くための最も現実的な選択肢としては、スポーツ用品メーカー、イベントビジネス、スポーツトレーナー、栄養士など、野球に近い分野の仕事をしている会社に就職することになる。とはいえ、そういう会社に入っても、必ず野球に関連する部署に配属されるかどうかはわからない。下手をしたら会社員生活のなかで一度も携われないことだって、十分に考えられるよね。

 だったら『自分でビジネスを始めてしまえ』と考える人がいるかもしれないけど、もし自分で野球関連の仕事を立ち上げるのだとしたら、まずビジネスアイデアが必要になってくる。そのためには、野球のどういうことに困っている人がいるのか、ということを考えなければならない。ビジネスは世の中の人たちの困りごとを解決するから生まれるものだからだ。

 そのためには、自分の強みを磨くのと同時に、世の中を知ることが大事になる。そうすれば、どこに困りごとがあるのかが、少しずつ見えてくるかもしれないからね」

鈴木「野球について、いま困っていることって何だろう」
由紀「人や環境によっても違いそうね」

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