17歳・大橋信、大会直前に39度発熱も世界新の裏側 指導者は「ちょっと普通の選手ではない」 (3ページ目)
【コーチは100m通過時点で「後半も持つだろう」】
太田コーチがこう明かす。
「100mを1分00秒台で入って、後半の100mは32秒台2回でまとめると話をしていたのですが、最初の100mを59秒台で入った時に、たぶん1分00秒くらいのつもりで入っているから後半も持つだろうなとワクワクしました。
最初の50mの時点で全力でなくても28秒27で入れているというのは、最初からいい泳ぎがハマったなという感じで。いつもなら途中で泳ぎをいろいろいじってリズムを変える時もあるのですが、今回はそれがほとんどなかった。ベストは出るなと思って見ていましたけど、2分04秒台が出るとは思わなかったですね」
日本選手権で、前半100mを59秒台で入る世界記録ペースに一度挑戦していたからこそ、2回目の今回は余裕を持っていけたのだろう。大橋は「今までは2分03秒くらいまで(記録を)伸ばして引退かなと思っていましたけど、今回2分04秒台を出したので、2分02秒台とか2分01秒台とか......。たぶん世界のレベルも上がってくるので、それにともない自分ももっとタイムを上げていけるかなと思います」と視線を先に向けた。
そんな大橋を太田コーチはこう見守る。
「僕は泳ぎをほとんど教えていないという感覚を持っているんですけど、それは彼が研究熱心で、日に日に泳ぎを自分で変えていくのがわかるし、考えているのがこちらにも伝わってくるので、実際に泳ぎをいじる必要がない。ちょっと普通の選手ではないというのは担当してすぐ感じました。
17歳で世界記録を出すとまでは思っていませんでしたけど、普通の選手だったら苦しんだり、立ち止まったりするようなところを、自分で乗り越えてくる能力が高い。(身長169cmと)体が小さいからハイテンポで泳ぐというのはひとつの武器にするべきだという話をして、やってきたのがよかったのかなと思います」
そして、これから目指す、北島が歩んだルートへの挑戦に向けてはこう話す。
「シドニー五輪前年、2000年のジュニア遠征から北島選手を見ていますけど、『勝ってほしいな』というところで勝つのが彼のすごさで、それに記録もついてくる。その域に行くためには、人間的な部分も含めてまだまだ経験や成長が必要だと思っています」
狙いどおりの世界記録樹立で、さらに夢が大きくなった大橋。これからの道はその一歩一歩が、多くの人に感動を与えるものになるだろう。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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