箱根駅伝2025 青山学院大の「箱根王者」としての源流にある「厳しさ」と「優しさ」 (2ページ目)
【失敗から学ぶことの重要性】
青学は厳しい。
それでも、青学は優しいとも思う。
特に、駅伝で「外した」選手に対して、原監督はセカンドチャンスを与える。
たとえば2023年の箱根駅伝で、中央大の吉居大和、駒大の田澤簾(ともに現・トヨタ自動車)とともに「史上最高の2区」を演出した近藤幸太郎(現・SGホールディングス)は、2020年の全日本大学駅伝で苦い思い出がある。2年生だった近藤は、これが初めての大学駅伝だったが、2区を走って区間13位だった。近藤は振り返る。
「僕は高校時代、部員が7人しかいない部活だったので、誰かが病気になったり、ケガをしたら、駅伝に出られない環境でした。都道府県対抗駅伝では走りましたけど、駅伝の経験が不足しているといえば、不足していて。2年生の時の全日本は、たすきをもらったのが10位で、最初、なにも考えずに突っ込んでしまったんですよ。すると、後半に足が止まって区間13位。本当に悔しかったですけど、『序盤は落ち着いて入らなければいけない』ことを、身をもって体験しました」
近藤は2年生のこの時の失敗から、「レースマネージメント」の重要性を学んだ。走り出す前も気合いを入れすぎず、リラックスを心掛ける。たすきを受けてからは冷静に。
すると、年明けの箱根駅伝では7区を任され、10番目でたすきを受けたものの区間3位の好走で3人抜き。3年生になってからの活躍は、ここに記すまでもないだろう。
近藤の例からも明らかなように、原監督はミスをした選手であっても、その後の練習がしっかり積めていれば、起用を躊躇することはない。
原監督はいう。
「そりゃ、本番で失敗してほしくはないですよ。青学の看板を背負って走るわけですし、負けたら悔しいから。それでも、学生諸君は失敗から学べます。特に駅伝での失敗は精神的にこたえるだけに、それに反発する力、『レジリエンス』が必要になる。その力を発揮すれば、成長につながるんです」
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