室伏広治は五輪優勝後に思った。「金メダルよりも重要なものがある」
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PLAYBACK! オリンピック名勝負―――蘇る記憶 第20回
いよいよ今年7月に開幕する東京オリンピック。スポーツファンの興奮と感動を生み出す祭典が待ち遠しい。この連載では、テレビにかじりついて応援した、あの時の名シーン、名勝負を振り返ります。
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2004年8月22日夜に行なわれた、アテネ五輪陸上競技男子ハンマー投げ決勝。5投目を終えた室伏広治は、フィールドに仰向けに寝転がり、何も考えずに空を見ていた。
競技場の強いカクテル光線にさえぎられて、何も見えない空。だがずっと見ていると、星の光がひとつだけ見えた。
2004年アテネ五輪ハンマー投げ優勝の室伏広治。大会後の日本のスーパー陸上で金メダルが授与された「集中する時に僕は、ほかの人が注目していないものを大事にするんです。そこにはエネルギーが集まっていると思うから。誰も見ていない空を見ていると、僕はひとりになれるし、集中できる。でも、そのときに星の光がひとつだけ、僕の視界に飛び込んできたんです。探していたわけでもないのに、必要なものは向こうから飛び込んでくる。誰も見ていない星の光を見ていて、『いける』と確信しました」
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