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ブラインドマラソン青木洋子は
有森裕子の言葉で奮起「パラ五輪を目指す」

  • 星野恭子●文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第35回 ブラインドマラソン・青木洋子
別府大分毎日マラソン(2020)

別大マラソンで、2位に入り東京パラの推薦内定をつかんだ青木洋子選手別大マラソンで、2位に入り東京パラの推薦内定をつかんだ青木洋子選手 アスリートの「覚醒の時」――。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪、そしてパラリンピックでの活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか......。筆者が思う「その時」を紹介していく――。

* * *

 パラ陸上・ブラインドマラソンランナーの青木洋子(NTTクラルティ)にとって、自他ともに認める「覚醒」したレースは2020年2月2日に行なわれた別府大分毎日マラソンだ。

 東京パラリンピック日本代表の推薦内定枠がかかった最後の一戦だった。昨年春、日本ブラインドマラソン協会が発表した選考基準により3枠のうち2つは別の大会ですでに他選手が手にしていた。別大では残りの1枠をライバル6選手で争った結果、青木がセカンドベストとなる3時間10分40秒で走り抜き、視覚障害女子の部で2位となって最後の切符をつかんだのだ。

「推薦内定を勝ち取るという目標を達成できたことが何よりもうれしいですが、もう一つ、終盤での失速という不安を乗り越えられたことも大きな収穫でした」

 青木は大きなプレッシャーの中でスタートラインに立っていた。前年の別大で、快調だった前半から一転、後半に大きく失速して4位に終わった苦い経験が頭をよぎり、試合の1カ月以上も前から不安に襲われ、仕事は手につかず、家でもピリピリしていたと明かす。

 レースはリオパラリンピック銀メダリストで、東京大会代表内定も決めている道下美里(三井住友海上)がスタートから別次元のペースで飛ばし、世界新記録(2時間54分22秒)を樹立して優勝したが、2位以下は混戦だった。スタート後しばらく、青木は3位につけていた。「切符」をつかむには道下に次ぐ2位が絶対条件だったので、早めに追いつくべきか、葛藤しつづけたが、「去年のように、また脚が持たなかったら......」という思いがつきまとった。

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