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【カーリング日本選手権】ロコ・ソラーレは粘りの「ゾンビゲーム」で五輪への道をつなぐ (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text&photo by Takeda Soichiro

 そんな苦悩のシーズンを送っているなか、たとえば2017年にはサードの吉田知那美が「何かを変えなければ、取り入れなければ、という気持ちはある」と、迷いや焦りを吐露している。だがその言葉どおり、ロコ・ソラーレは変化を恐れずに戦い続けたことによって、平昌五輪で銅メダル、北京五輪で銀メダルという快挙達成を果たした。

 こうしたチームの変遷を振り返って、セカンドの鈴木夕湖はこう語る。

「うちらが負ける時って、だいたいカッコつけてた時だから」

 ロコ・ソラーレはこの8年間において、焦りを準備に昇華させてきた。喜怒哀楽を解放し、我慢強さと泥臭さを備えつけた。

 実際、2021年の北京五輪代表トライアルでは、北海道銀行フォルティウス(当時)を相手に2連敗から3連勝を飾って日本代表に。本番の北京五輪でも予選敗退を覚悟した状況から、奇跡の準決勝進出を果たしたことは、記憶に新しい。

 勝てないシーズンには、ネガティブな感情になることもあっただろう。しかしそんなことも、リードの吉田夕梨花は「スキルアップや学びに結びついたと思う」と言う。苦しい経験を、難航ではなく助走、停滞ではなく投資と割りきっていた。

 吉田知は以前、「『常勝軍団』とか『美しく勝つ』なんて言葉は、漫画などで読むと面白いけれど、私たちには縁がない。私たちはダサいほうが強いんです」とも話している。

 今季もロコ・ソラーレは、グランドスラムで連敗スタートからクオリファイを決めている。3点リードされた最終エンドで同点に追いつき、エキストラエンドで逆転したゲームもあった。意地でも土俵を割らない粘り強さを「ゾンビゲーム」と称し、彼女たちは笑う。そしていつの頃からか、そういった戦い方が「ロコ劇場」と呼ばれるようになった。

 ロコ・ソラーレが来年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に出場するためには、今回の日本選手権で最低でも3位以内の成績を残さなければならない。だが、その条件をクリアすることは決して簡単ではない。

 近年はライバルとなるチーム、SC軽井沢クラブや北海道銀行ら若手を主軸としたチームの成長が著しい。藤澤加入以降、出場した日本選手権では常にファイナル進出を果たしてきたロコ・ソラーレだったが、昨年の大会でその記録も途切れてしまった。

 3大会連続の五輪出場に向けて、ロコ・ソラーレはまさしく崖っぷちの状態にある。

 迎える日本選手権。初戦で昨年の準優勝チームで、今季ツアーでは負け越している北海道銀行と対戦する。あとがない"ゾンビ軍団"は、はたしてどんなゲームを見せるのか。

 4年に一度の最高峰の舞台へ、"ロコ劇場"の幕は三度、上がるだろうか。

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