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ボートで日本代表を経験した逸材が転身。自転車歴1年余りで早期卒業ラインをクリアし、規格外の能力で競輪界へ

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu、石川高央●撮影 photo by Ishikawa Takao


 2021年12月22日、日本競輪選手養成所で学んでいた太田海也、中野慎詞の2人のニュースターが通常よりも3か月早く卒業を果たした。将来を嘱望されている2人はこれからどんな道を歩んでいくのだろうか 。「ニューウェーブ到来!競輪特集」ではこの2人の成長を複数回に渡って追いかけていく。

ボートから転身し、自転車でも能力を発揮している太田海也ボートから転身し、自転車でも能力を発揮している太田海也

 太田海也は自転車を本格的に始めてわずか1年余りの2021年5月に日本自転車養成所に入所した。そして1カ月後に行なわれた6月の記録会で、並み居る若き自転車界の猛者たちを上回る記録を出し、「早期卒業生候補生」の基準までクリアする。

 幼少時から多くのスポーツに親しみ、高校から始めたボート競技でジュニアの日本代表になった身体能力は規格外で、まさにフィジカルモンスター。1月に競輪選手としてデビュー予定だが、この22歳はこれからも競輪界で歴史を作り続けるだろう。そしてボートでは成し遂げられなかった世界一も同時に目指す。その可能性の大きさはまだ誰も計ることができない。

「養成所に入る時、何事も挑戦する心を持って取り組もうと心に決めました。入所から1カ月で『早期卒業候補生』の資格を得られましたが、それだけで早期卒業が決まるのではなく、その後も競走訓練での課題があり、自転車経験の浅い自分にはそれがネックになると思っていたので、『やったぞ』という感覚はあまりなかったですね。

 そもそも資格を得たからといって、早期卒業しなければいけないわけではないんです。むしろ自分は養成所で最後まで学ぶべきかなという思いもあったのですが、『これも挑戦だ』と覚悟を決めて、早期卒業のためのカリキュラムに取り組みました。結果的にすべてクリアでき、うれしく思っています」

 キャリアが浅いからこそ、伸びしろも大きい。それが太田の魅力だ。養成所での生活は新鮮なことの連続で、毎日、自転車の知識を吸収していった。しかし、競走して勝つといった経験だけは一朝一夕に積み上げることはできない。勝負の場における駆け引きや、力の発揮の仕方には苦労したという。

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