鈴木明子が羽生結弦の来季に求めるもの。「もっとエモーショナルに」

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • 能登直(羽生)、是枝右恭(鈴木)●撮影 photo by Noto Sunao, Koreeda Ukyo

鈴木明子が「羽生結弦」を語る

 羽生結弦選手は「絶対王者」と呼ばれながら、世界選手権の優勝を逃していたことがものすごく歯がゆかったと思います。彼は「勝ちたい」だけでなく、「圧倒的に勝ちたい」人ですから。

世界選手権のフリーで最高の演技を披露した羽生結弦世界選手権のフリーで最高の演技を披露した羽生結弦 2017年2月の四大陸選手権。本人の表情からすると、ショートプログラムが終わるまでは、まだネイサン・チェン選手(アメリカ)や宇野昌磨選手と自分との間には少し差があると思っていたように見えました。今まではミスがあっても勝てましたが、今回は「もう、そうではない」と実感したのではないでしょうか。ショートプログラムが終わって目の色が変わりました。結果的に総合でもネイサン選手に敗れたことが、世界選手権の優勝につながりましたね。四大陸選手権は羽生選手にとって、ターニングポイントになったのではないでしょうか。

 2014年のソチオリンピックで羽生選手がチャンピオンになってから、ほかの選手たちは「どうすれば羽生に勝てるのか」をずっと考えてきました。その答えは、「羽生が跳ばないジャンプを跳ぶこと」。彼が持っていない武器をみんなが探してきました。宇野選手もネイサン選手も、世界選手権で表彰台に上がったボーヤン・ジン選手(中国)たちも、羽生選手との差を4回転ジャンプで埋めようとしています。だから、フリップやルッツに挑んだのです。

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