プロレスラー真白優希は給料未払いでも団体に恩返し 「お客さんを笑顔にできるチャンピオンに」
■『今こそ女子プロレス!』vol.24
真白優希 後編
(前編;「へなちょこ」プロレスラーだった真白が初告白 ベルト初戴冠の裏で起きていた異変>>)
2022年9月、本当の自分と真白優希というレスラーのイメージの乖離から精神を病み、引退を発表。その後、真白はひとり暮らしを始め、1カ月は家に引き籠もっていたが、「このままではいけない」と古着屋でアルバイトを始めた。半年後に「別の仕事をしたい」と思い、女性専用ジムのパーソナルトレーナーを始めた。知識も必要とされ、女性同士の距離感も難しかったが、やりがいを感じながら働いた。
2022年に一度引退するも、2024年1月に現役復帰した真白優希photo by 林ユバこの記事に関連する写真を見る
引退後もプロレスは好きで、試合を観戦しに行くこともあった。2023年11月7日に開催された、黒潮TOKYOジャパン自主興行『どのツラさげて帰ろうか』にも足を運んだ。WWEを解雇された黒潮にとって、初の凱旋試合である。
バラモン兄弟と場外で水を掛け合う黒潮を見て、真白は「私はこれをやりたかったんだ!」と思った。お客さんとこんなにも一体化し、お客さんを楽しませる黒潮が眩しく見えた。またリングに立ちたい――。自分でも不思議なくらいにそう思った。
とは言え、「復帰したい」と気軽に言えるものではない。考えあぐねていた真白に、「そんなに意志が強いなら戻ってきなよ」と言ったのは、アイスリボンの先輩・星ハム子だった。そこから社長に会いに行き、とんとん拍子に復帰が決まった。
2024年1月27日、後楽園ホール大会の対真琴戦で現役復帰を果たす。摩訶不思議なスタイルは変わらないが、黒潮の影響で「お客さんを巻き込む」ということを意識するようになった。
「前はお客さんの顔を見られなくて下を向いたりしてたんですけど、復帰してから顔を上げて、お客さんひとりひとりの目を見て試合ができるようになりました。煽ったり、目突きをしたり、お客さんを巻き込みたいと常に思っています」
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著者プロフィール
尾崎ムギ子 (おざき・むぎこ)
1982年4月11日、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業後、リクルートメディアコミュニケーションズに入社。求人広告制作に携わり、2008年にフリーライターとなる。プロレスの記事を中心に執筆し、著書に『最強レスラー数珠つなぎ』『女の答えはリングにある』(共にイースト・プレス刊)がある。