元日本代表セッター佐藤美弥は「バレーとは関係ない進路を自分のなかで決めていた」。江畑幸子、栗原恵ら競技人生を変えた出会い (4ページ目)
もうひとり、佐藤の支えになったのが栗原恵だった。長らく日本女子バレー界をけん引した栗原は、パイオニアレッドウィングスや岡山シーガルズなどを経て、松田と同じ2014年に日立に加入。ケガに苦しむこともありながら、豊富な経験をチームに還元した。
チームメイト時代、栗原は常に「ミヤは十分頑張っているよ」という言葉をかけてくれた。それで気持ちがラクになったことに加え、プレー面でも「『すごくアタッカーに対して遠慮している』というアドバイスは印象に残っています。アタッカーに合わせるんじゃなくて、『セッターがもっと操っていい』と。それでトス回しも向上させることができた」と語る。
さらに別の"すごさ"を実感したのは、栗原が2018年に日立を退団し、JTマーヴェラスに移籍したあとだ。
「めぐさんがチームから離れたあとは、自分が年齢的にも経験的にも上の立場になり、その難しさをものすごく感じました。自分の欲や思いもあるけど、最年長としての振る舞いもしないといけない。そういうことで悩んだ時に、JT時代や引退されてからも、めぐさんは何度も相談に乗ってくれました。
私が日本代表で結果がなかなか出ない時も心配してくれて、東京五輪に出場できないことが決まった時には自分の気持ちを包み隠さずに伝えました。めぐさんは、顔を見ただけでわーっと感情が溢れてしまうような存在。一緒にプレーできたこともそうですが、出会えたこと自体が『よかったなぁ』と思います」
今年5月に行なわれた佐藤の引退試合には、栗原が花束を持って"サプライズ登場"した。
「びっくりしましたよ(笑)。ずっと支えてもらっていた方に、引退のタイミングで花をいただけた。『本当に幸せだな』と感じました」
(後編:今も悔やむ中田ジャパンで「疑問を残したまま」のこと>>)
◆佐藤美弥(さとう・みや)
1990年3月7日生まれ、秋田県出身。小学校4年生からバレーを始め、セッターとして聖霊女子短大付属高校、嘉悦大で活躍。卒業後の2012年に日立に加入して成長し、2017年からは中田久美監督体制の日本代表で多くの試合に出場。スピードのあるトスワークで攻撃陣をけん引した。2021年5月に現役を引退。男子日本代表セッターである藤井直伸との結婚を発表した。
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