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フロリダ在住、大坂なおみ。全米OP覇者を倒した17歳 (4ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 家族内のヒエラルキーに変化が表れ始めたのは、フロリダに引っ越してから数年経った10歳のころ。後に、「人生最高の勝利」と言及する姉からの初白星も、この時期に訪れた。ひとつの勝利による歓喜と成功体験は、さらなる達成感と強い対戦相手を欲する。練習や試合に対する意識や取り組みも、10歳前後を境に大きく変わっていった。

 そしてもうひとつ、この時期に大坂は全身を感激と興奮が駆ける印象深い体験をする。それは、セリーナ・ウィリアムズが2001年のインディアンウェルズ大会を制した映像を見た時だ。この試合でセリーナは、終始観客の大ブーイングを浴びながら戦っていた。原因は、同大会の準決勝で対戦予定だった姉のビーナスが、試合直前で棄権したことにある。待望の一戦が消失したことに対するファンの不満は、あろうことか決勝戦のセリーナに向けられたのだ。

 それでも当時19歳のセリーナは、1万人の観客を敵に回しながら勝利を掴み、そして試合後には、家族の胸に飛び込み号泣した。そんな勝者に大坂は、対戦相手の家族や友人から心ない言葉を浴びせられた、かつての自分の姿を重ねる。「こんな逆境でも勝つなんて!」。悲壮で勇敢な試合はモチベーションとなり、セリーナは彼女のアイドルとなった。

 ちなみに大坂は昨年7月、この憧れの存在とスタンフォード大会で初対面を果たしている。ふたりはそれぞれの生い立ちや練習環境について言葉を交わし、お互いの練習拠点が近いことを知って、「なんだ、すっごいご近所さんじゃない!」と笑い合った。

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