神尾米が語る錦織圭「まだ挑戦者のままでいいじゃない」

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva  photo by AFLO

 初のグランドスラム制覇なるか――。今年の全豪オープンは、かつてないほどの注目が錦織圭に集まった。結果は、昨年全豪覇者のスタン・ワウリンカ(スイス)に敗れ、準々決勝敗退。世界ランキング5位として挑んだ全豪での戦いを、元プロテニスプレイヤーの神尾米氏はどう見たのか。

全豪での錦織圭は強烈なサーブで試合の主導権を握った全豪での錦織圭は強烈なサーブで試合の主導権を握った 全豪オープンの錦織選手は、やはり相当なプレッシャーを感じていたと思いますよ。それは、有名人になったことでコートの中だけではなく、どこへ行ってもパパラッチに狙われているような状況によって生まれたプレッシャーかもしれません。想像するに、いろいろなわずらわしさを感じながら、日々生活していたのではないでしょうか。全豪オープンでは練習にしても、本当に多くのファンやメディアの方たちが見に来ていましたから。

 ただ、そうは言っても、錦織選手本人は全然変わらないんですよ。私たちへの態度も、以前と一緒です。たしかに、彼の周りには人が増えたし、テレビ収録のスタジオなどにいられる時間も限られるようになりました。マネージャーさんたちのガードが固くなったのは間違いありません。本人は普通にしているけれど、周囲がザワザワしているのは感じているだろうし、自分の名前がニュースサイトのトップなどに常に出ているわけですから、「今までとは何かが違う」と感じながらの戦いだったと思います。

 また、試合を見ていても、対戦相手の戦い方が変わってきたのは明らかでした。ランキング下位の選手は、トップ選手相手の戦法を取っていました。それはひと言で言ってしまうと、「ハッタリを効かせてくる戦い方」です。今までだったら、長いラリーを続けたり、試合そのものが長引けば、「どこかでミスをしたり、体力切れするのでは?」という思いが相手にもあったと思います。でも、それではもう勝てないことが相手も分かっている。だからこそハッタリを効かせて、どんどんウイナーを狙ってくるようになっていました。

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