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モウリーニョはなぜ通訳から一流監督になれたのか 目の前の人間の心を震わせる「言葉の力」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

【ベンチの選手までが心酔】

「できないはずがないだろう。なぜなら、お前は私にたどり着けた。ほかのポルトガル人記者がひとりもたどり着けないこの私に、だ。それ以上に、俺が言えることがあるか?」

「なんてしびれることを言うのだ!」と、雷に打たれたような気がした。

 実際、その部屋の外にたむろしていたポルトガル人記者たちは、ひとりも独占インタビューが取れていなかった。広報担当者からは「一切、彼ら(記者たち)とは話をしないように。私が火だるまになる」とクギを刺されていた。それは、見知らぬ国からやって来た記者が、なぜか大谷翔平のインタビューを取っているようなものだった。

 だからこそ、モウリーニョの言葉に興奮し、勇気づけられた。

 同時にこう思った。見ず知らずの東洋人の記者の気持ちを、これほど揺さぶれるリーダーである。現場で麾下(きか)の選手と対峙した時、そのエネルギーはきっとすさまじいはずだ、と。

 リーダーの本質は、まずは目の前の人間の心を動かせるかどうかにある。ひとりを魅了できなかったら、集団を惹きつけることはできない。

 ポルトの欧州制覇の原動力になったMFで、のちにバルセロナでも活躍したデコはこう語っていた。

「モウリーニョは試合前のミーティングで、"今日の試合展開はこうなる"と予言めいた言葉を口にするんだけど、それがものの見事に的中するんだよ。相手選手のスカウティングは完璧で、おかげで簡単に攻略できた。決して珍しい言葉を使うわけではない。ただ、純粋にアドバイスが的確だったから、選手たちは自然に彼に従うようになったんだ」

 モウリーニョは人並み外れた慧眼があった。だからこそ、ベンチに座る選手まで心酔させたのだろう。ポルトで悪童と言われたFWベニー・マッカーシーには、「ベンチ? 監督は自分のことを一番わかってくれている。準備ができたら、必ずピッチに入って活躍できる。彼のために死ねるよ」とまで言わしめた。催眠術でも使ったように、見えていない景色を見せ、最大限の力を発揮させたのである。

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