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【プレミアリーグ】三笘薫は果敢さを取り戻せるか 長身のアイルランド代表DFを相手に縦突破が見たい (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【縦方向への意識に欠けていた】

 よく言えば、バランスを保とうとしたとなるが、その動きはウイングと言うより、中盤フラット型4-4-2のサイドハーフ的だった。"歌を忘れたカナリア"ではないが、アタッカーであることを忘れてしまったかのようなプレーだった。

 後半に入ると、1分、7分、18分と、三笘にパスが出るやカイパーはインナーラップを繰り返した。大外に開いて構えるウイングの内側をSBに走り込むプレーといえば、2010年代にバイエルン&ドイツ代表で、フィリップ・ラームとトーマス・ミュラーが魅せた関係が走りとなる。

 このパス交換が決まり、SBがゴール近距離の深い位置からボールを折り返せば、その瞬間、得点への期待感が高まる。モダンなサイド攻撃ではあるが、判で押したように、このプレーを続けると決まるものも決まらなくなる。

 カイパーが内側を走ると、三笘は右足のアウトでパスを突くように送るのだが、縦への仕掛けが全くない状態でこのプレーに及べば、相手に読まれるのは当然だ。

 フラム戦の三笘は結局、83分に交代でピッチをあとにするまで、1度も縦勝負を敢行しなかった。慎重なプレーは昨季あたりから目につくようになっているが、トライせず縦勝負ゼロで終わった試合は記憶にない。

 この日、最大の見せ場となったのは後半21分のプレーだった。カウンターから1トップ、ラターのパスを受けた瞬間になる。場所はゴール正面。縦方向へのトラップが決まれば、次の瞬間シュートも打てそうな、決定的なチャンスを迎えそうなシーンである。

 三笘はそこでトラップミスをしてしまう。正確にはトラップミスと言うより、止める方向を間違えたという感じだ。右足のアウトで内側に止めてしまった。左足のインサイドで縦に持ち出すように止めることができなかったのだ。左ウイングで繰り返してきたボールの止め方を、真ん中でつかんだ決定的なシーンでもやってしまった。縦方向への意識に欠けることを象徴する、アタッカーとして残念なプレーだった。

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