サッカーの「トップ下」はハードワーカー優先へ ユベントスのオランダ人MFは時代の分岐点か

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

西部謙司が考察 サッカースターのセオリー 
第18回 トゥーン・コープマイネルス

日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。今回は、ユベントスのオランダ人MFトゥーン・コープマイネルスを紹介。彼のプレーが示している「新しいトップ下像」に迫ります。

【サッカーの「10番」とは】

 現代サッカーに「10番」がいなくなった。そう言われるようになったのは実は最近ではなく、ずっと以前からだ。

今季ユベントスのトップ下を務める、オランダ人MFコープマイネルス photo by Getty Images今季ユベントスのトップ下を務める、オランダ人MFコープマイネルス photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る ここで言う「10番」とは、もちろん単なる背番号ではない。ブラジルで「サッカーのすべて」と呼ばれたように、とびきりの技術と閃きでファンを魅了した選手たちを指す。サッカーの魅力と可能性を示し、絶大な支持を得てきた。

 ペレ(ブラジル)は数々の奇想天外なアイデアを披露した典型的な「10番」だったが、その後もヨハン・クライフ(オランダ)、ディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン)、ジーコ(ブラジル)、ミッシェル・プラティニ(フランス)など、時代をリードするスーパースターたちが現われた。彼らほど有名でなくても、どのチームにもそれぞれの「10番」がいたものだ。

 ところが、1990年代から「10番」は絶滅危惧種のように減少の一途をたどっていく。2000年代にもジネディーヌ・ジダン(フランス)やフアン・ロマン・リケルメ(アルゼンチン)はいたが、当時すでに「古典的」「恐竜」などと呼ばれるくらい、極めて珍しい存在になってしまっていた。

 なぜ、「10番」はいなくなってしまったのか。

 今季、ユベントスはアタランタからトゥーン・コープマイネルス(オランダ)を獲得し、4-2-3-1システムのトップ下に起用している。たぶん、これが答えだ。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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