田中碧のデュッセルドルフ2年目は輝きが違う。中盤を完全に支配して「すごく楽しくサッカーができている」
田中碧を取り巻く環境は、この1年で様変わりした。
右肩上がりでの成長を続ける若き戦士の名は海を越え、川崎フロンターレからドイツ2部フォルトゥナ・デュッセルドルフへ期限付き移籍をしたのが昨年の夏。崖っぷちの状況に追い込まれたワールドカップ最終予選では、オーストラリア戦の先発に抜擢されると同時に日本代表初得点を挙げ、サムライブルーの一員に定着した。
開幕戦でマンオブザマッチに輝いた田中碧この記事に関連する写真を見る しかし、本大会への切符を手にした日本代表での存在感に比べ、所属クラブでは難渋が続いた。リーグ戦が中断していた昨年末に『ビルト紙』では「日本では英雄だが、フォルトゥナでは低迷。田中は一体いつになったら火がつくのか」という屈辱的なタイトルの記事が掲載され、下記のような酷評が書き連ねられた。
「アオ・タナカの獲得は、昨夏のフォルトゥナにとって大当たりの移籍劇になるはずだった。この日本代表選手とともに、中盤の骨格を作り上げることが、もともとのプランだった。彼は中心人物になるはずだった。しかし、田中が日本代表でやっているようなことは、今のところこのクラブではまったくうまくいっていない」
「数字も恐ろしい。13試合でノーゴール・ノーアシスト。シュートはたった14本。1対1の勝率もわずか45.1%。トップスピードは31.67km/hで、フォルトゥナで最も足が遅い選手のひとり」
事実、これより少しさかのぼることになるが、田中自身もデュッセルドルフ加入から約2カ月半が経過した時点で、こう心境を吐露している。
「個人的には、まったく何もできてないのが現状。すごく苦しんでるなっていうのはわかっていますし、自分のプレーを出せてないっていうのは感じている。自分よりも大きくて速いボランチの選手がたくさんいるなかで、自分が何をしていくのかっていうのを考えさせられますし、力不足をシンプルに感じています」
オリンピック代表での活動があり、プレシーズンという慣らしの場がなかったとはいえ、これほど懊悩(おうのう)する日々を過ごすことになろうとは、本人も想像していなかったはずだ。
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